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日本のデジタル庁を参考に台湾に「デジタル発展省」設立、オードリー・タン氏がWCCEで語ったデジタル教育の境地

一般社団法人 情報処理学会、コンピュータと教育研究会、教育学習支援システム研究会は2022年8月20日から5日間にわたり、「教育におけるコンピュータ」をテーマにした4年に1度の国際会議「IFIP TC3 WCCE(World Conference on Computers in Education)2022」を、広島国際会議場で、アジアで初めて開催しました。内閣府の特別機関の1つである日本学術会議との共催です。

デジタル庁や文部科学省、総務省が後援するこのイベントを、ラックは主要スポンサーとして支援しています。台湾デジタル担当大臣のオードリー・タン氏がリモート登壇したこの会議の様子をレポートします。

台湾デジタル担当大臣のオードリー・タン氏が登壇した基調講演
台湾デジタル担当大臣のオードリー・タン氏が登壇した基調講演

日本のデジタル庁を参考に台湾で新組織「デジタル発展省」が始動

講演は、事前に集めた教育に関するさまざまな質問に、タン氏が答える形で進んで行きました。はじめにタン氏は台湾での仕事について、電子投票を可能にするデジタルによる環境を整備することで、人々がより積極的に自分の意志を表明できる民主主義の仕組みを整備することを重視していると語ります。

質問は以下のように多岐にわたっています。
──日本では小中高ともに先生が忙し過ぎて、ITなどの新たな教育ニーズに対応できないという課題がありますが、タンさんはどのようにお考えですか?
──創造性を測ることはできますか?
──今後10年で劇的に成長すると考えられる国はどこですか?
──ソーシャルメディアのトラブルが日本では多くなっています。台湾ではどうでしょうか
──タンさんの今後の人生の目標は何ですか?

──台湾のデジタル開発はどの点で特別ですか?もし日本のデジタル開発をリードするとしたら何をしますか?
最後の質問に対して、タン氏は次のように答えています。

「台湾がそれほど特別だとは考えていません。日本にはデジタル庁があり、デジタル担当大臣がいますね。既にわれわれは良い関係を築いています。台湾でもデジタルの新たな組織が立ち上がる予定です。通信、セキュリティ、プラットフォーム経済、電子政府を1つの省にまとめることを決めたのですが、それは日本の取り組みの影響を受けたものです。その上で、もう1つの考え方があるとすると"われわれはデジタルコンピテンス(能力)を教えない"ということです。デジタルコンピテンスはクリエイティブなもので、親や教師と子供が共に学ぶものだと考えるからです。初等教育(小学校)においてですら、デジタルは一緒に作り上げる中で学ぶべきものです。そして、作り上げたものをクラス内はもちろん、国全体、さらに世界のコミュニティでシェアし、人々がその作品にアクセスできるようにする──そうした仕組みは、例えばRaspberry Piでエアーボックスを作るといった自由な取り組みを、維持していくことにつながるでしょう。それがデータの民主化であり、これからのデジタルコンピテンスであると考えています」(タン氏)

※ 編注:8月27日にデジタル発展省としてスタート

こちらからセッション全編を見られます。

ラックの研究機関「Cyber Grid Japan」が発信する3つの情報源

ラックの講演に登壇したのは左から高橋、三木、船引
ラックの講演に登壇したのは左から高橋、三木、船引

タン氏の講演に先立ち、ラックは21日に講演を担当しました。デジタルに関する情報を積極的にシェアしていくべきという点で、タン氏が考えるデジタル教育に沿うものとなっています。

ラックの研究開発機関であるサイバー・グリッド・ジャパン(CGJ)は、ICTリテラシーの向上を図る研究活動について紹介しました。具体的には、2022年2月にリリースした冊子「サイバーセキュリティ仕事ファイル」、ICTリテラシー啓発をテーマにYouTubeで配信する「ラックラジオ」、情報リテラシーに関する出版物である「情報リテラシー啓発のための羅針盤(コンパス)」の3つに焦点を当てています。

サイバーセキュリティ仕事ファイル

講演したCGJ ICT利用環境啓発支援室の高橋怜子は、『サイバーセキュリティ仕事ファイル 1』を2022年2月に発刊した背景について話しました。子供がなりたい職業の調査で、YouTuberが1位になり、2位以下は、野球やサッカー選手といったプロアスリート、警察官、イラストレーター、図書館司書、外交官、声優、パティシエ、ヘアドレッサー、保育士と続くとのデータを示します。

高橋は「トップ100にサイバーセキュリティやITに関する仕事が1つもありません。子供たちは、日常生活やインターネット上で、サイバーセキュリティの仕事が自分たちの大切な情報を守っていることを知りません。日本のサイバーセキュリティ産業におけるこの問題を解決するために、読みやすさを大切にしたハンドブックを制作しました」と背景を説明しています。

ここで『サイバーセキュリティ仕事ファイル 1 ~みんなが知らない仕事のいろいろ〜』を紹介しましょう。

インターネット被害者の味方であるインシデントハンドラーやインターネット空間の名探偵コンピューターフォレンジッカーをはじめ、プラットフォーム診断士、Webアプリケーション診断士、サイバー犯罪捜査官、セキュリティインストラクター、ゲームセキュリティ診断士、情報システムペネトレーションテスター、IoTデバイスペネトレーションテスター、セキュリティコンサルタント、脅威情報アナリスト、リスクマネジメントの計12の職業を、10歳以上の読者を対象に、イラストを交えてわかりやすく説明しています。

以下のリンクから簡単にダウンロードできますので、ぜひ一読してみてください。

サイバーセキュリティ仕事ファイル 1 ~みんなが知らない仕事のいろいろ~

『サイバーセキュリティ仕事ファイル 1 ~みんなが知らない仕事のいろいろ~』 ダウンロード

「ラックラジオ」

ラックラジオ

CGJのアソシエイトである三木俊明が紹介したのは、GIGAスクール時代のICTリテラシー啓発、サイバーセキュリティ教育について、YouTubeで語る無料ラジオ「ラックラジオ」です。特に、コロナ禍においても児童や生徒に学校教育を継続している様子などをテーマに掲げ、さまざまなゲストを迎えて話を聞いています。この発表では「サイバーセキュリティが提供側だけの課題ではなく、利用者側である消費者や子供たちのリテラシー向上が課題になっている」と強調します。

さらに「SDGsが大切であることが浸透しているのと同じように、サイバーセキュリティが重要であることを子供たちに伝えたい」と三木。サイバーセキュリティについて「システム開発に付いているものというイメージがあったが現在は全く状況が違う。必ず経営的な視点で考えなくてはいけないものになっていることを子供たちにも知ってもらいたい」と述べています。

情報リテラシー啓発のための羅針盤

ラックによる情報発信の3つ目は『羅針盤』です。ラックの取締役常務執行役員の船引裕司は「ICT教育のあらゆる場面で、私たちはサイバーセキュリティ情報を継続的に発信してきました」と羅針盤の役割を説明。インシデントに関するファクト(事実)や課題、ゴール設定、事例などを、裏付けを持った形で情報発信しています。

ラックが、日々のセキュリティインシデントから企業を守ることに加え、CGJなどの社内組織がアカデミアと連携し、将来に役立つ情報を提供していることを、羅針盤の紹介を通じて解説しました。

最後に、ICT利用環境啓発支援室が2022年3月発刊した研究レポート「CYBER GRID JOURNAL Vol.13」も紹介しています。

CYBER GRID JOURNAL Vol.13

CYBER GRID JOURNAL Vol.13 ダウンロード

展示会場でのラックブースの様子
展示会場でのラックブースの様子

WCCEは、情報教育と教育へのデジタル活用に関する代表的な国際会議として、情報処理国際連合(International Federation for Information Processing:IFIP)の教育に関する技術委員会3が、1970年の第1回アムステルダム大会以降、数年間隔で開催しています。今回の広島大会で第12回目であり、アジアでは初の開催となりました。日本の学術機関を含めた世界中から登壇者を集め、活発な情報発信が繰り広げられました。

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