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サイバー・グリッド・ジャパン ICT利用環境啓発支援室の高橋です。
「サイバーセキュリティって何?」と小学生から聞かれたら、説明できますか?
いきなりこんな質問をされると、多くの人が戸惑ってしまうのではないでしょうか。またサイバーセキュリティの仕事をしている人でも、準備をしていないと小学生が分かるレベルで説明することは難しいと思います。
そこで、「多くの人にサイバーセキュリティについて知ってもらいたい」「サイバーセキュリティに興味を持ってもらいたい」「将来のサイバーセキュリティの担い手を増やしたい」という目的で、サイバーセキュリティに関わる仕事について分かりやすく紹介する『サイバーセキュリティ仕事ファイル 1 ~みんなが知らない仕事のいろいろ~』(以下、サイバーセキュリティ仕事ファイル)を制作しました。
サイバーセキュリティへの理解はどのくらい?
サイバー攻撃による被害は、毎日のようにテレビのニュースや新聞などでも目にするようになりました。その一方で、インターネットを使う多くの人にとって、サイバーセキュリティについて理解を深めるには残念ながら至っていません。ITやサイバーセキュリティの業務に従事している人、学んでいる人でなければ「サイバーセキュリティ」と言われても、ピンとこないことが多いと思います。
日本だけでなく、世界中の人々がPCやスマートフォンを使って毎日のようにインターネットを利用している昨今、誰でもサイバー攻撃の標的になる可能性があります。また、就学前からインターネットを意識せず情報機器を利用する幼児が増えるとともに、携帯電話からスマートフォンに切り替える高齢者が増えたことで、サイバーセキュリティは今まで以上に重要な役割を担うようになりました。
このような状況の中、どうすればサイバーセキュリティについての理解を深められるのでしょうか?
『サイバーセキュリティ仕事ファイル』を作るきっかけ
ラックの研究部門であるサイバー・グリッド・ジャパンには三つ研究所があり、その中の一つが私の所属するICT利用環境啓発支援室です。ここでは、小学生から高齢者まで、ICTを利用する全ての人に向けて情報モラルや情報リテラシー、情報セキュリティの啓発やその手法の研究を担当しています。
工業高校や商業高校で情報を選択している生徒や、理系学部の学生を対象とした情報セキュリティ講座を担当する際、サイバーセキュリティの仕事についても紹介をしていました。しかし、小・中学生や文系の学生向けの講座では紹介していません。ITやサイバーセキュリティの専門用語を使わざるを得ず、専門的になってしまうためです。普段、専門的に情報を学んでいない児童・生徒・学生に、どうしたら分かりやすくサイバーセキュリティの仕事を紹介できるかが、大きな課題となっていました。
まず、サイバーセキュリティに関わる仕事が実際にどのくらいあるかを調べてみました。すると、IT系企業の中の仕事だけでなく、メーカー、ゲーム関連、教育、団体など、想像以上にさまざまな業種にわたって、いろいろな仕事があることに驚かされました。同時に、サイバーセキュリティやサイバーセキュリティの仕事について分かりやすく説明しているサイトや書籍などが少ないことに気が付きました。
そこで、サイバーセキュリティの仕事について子供たちに知ってもらうとともに、サイバーセキュリティについて興味を持ってもらうべく、読みやすいハンドブックを自分たちの手で作ろうとなったのです。
どうやってハンドブックを作る?
まずはハンドブック全体のイメージを考える前に、読者(ターゲット)を定めることから始めました。サイバーセキュリティについて分かりやすく説明することが目的であるため、小学校高学年以上と設定しました。ハンドブックのイメージは漠然と大人向けに格好良くしようかと考えていましたが、読者が小学生以上ということで、ここは敢えて全体的に柔らかいイメージでいこうと。イラストにある小物や表情などは、それぞれのセキュリティのプロフェッショナルからヒントをもらったので、ぜひイラストにも注目してみてください。
ハンドブックに載せる職種については、職種の数がとても多いのでどれをとりあげるべきか悩みました。そこで、サイバーセキュリティの仕事に長年携わっている人に相談し、候補の職種をピックアップしました。さまざまなプロフェッショナルにインタビューしていきましたが、コロナ禍なのでインタビューは全てオンラインです。インタビューを受けてくださった方の中には、海外からインタビューを受けてくださった方もいました。
今回はインタビューをもとに12の職種の紹介、そしてコラムなどを執筆しました。小学生が理解できるようにするため、教育学の研究者の先生に文章をチェックいただくとともに、文章中はできるだけ専門用語や難しい言葉を使わないようにしています。易しい表現に言い換える言葉を探すため、1時間以上費やすことも多々ありました。
さらに、インタビューを受けてくれた人に考えてもらった職種のキャッチコピー、さまざまなエピソードなどをできるだけ取り入れています。それぞれの仕事に対する「想い」を込めることもできたのではないかと思います。分かりやすい文章を少ないページ数でまとめつつ、さまざまな情報を盛り込んでいます。子どもだけでなく、大人の方でも学べる要素や新たな発見があると思います。よく分からない、説明しにくいサイバーセキュリティやその仕事について学ぶ手始めとして、ぜひご覧ください。
『サイバーセキュリティ仕事ファイル 1』目次
- 1 インシデントハンドラー
- 2 コンピュータフォレンジッカー
- 3 プラットフォーム診断士
- 4 Webアプリケーション診断士
- 5 サイバー犯罪捜査官
- 6 セキュリティインストラクター
- 7 ゲームセキュリティ診断士
- コラム1 サイバーセキュリティやサイバー攻撃って、何だろう?
- 8 情報システムペネトレーションテスター
- 9 IoTデバイスペネトレーションテスター
- 10 セキュリティコンサルタント
- 11 脅威情報アナリスト
- 12 リスクマネジメント(リスクマネージャー)
- コラム2 算数や数学が苦手でもサイバーセキュリティの仕事ができる?
『サイバーセキュリティ仕事ファイル 1 ~みんなが知らない仕事のいろいろ~』 ダウンロード
最後に
サイバーセキュリティ仕事ファイルは、バラエティーに富んだ職種を取り上げています。サイバーセキュリティの入門書として制作したので、これを読んでサイバーセキュリティについて興味を持ってもらえたら嬉しいです。また、インターネットを使うことが生活の一部になっているからこそ、大人の方にも読んで欲しいと思います。今後もインタビューを続けていきますので、次号でどんな職種が取り上げるかも含め、ぜひ楽しみにしてください。
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