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企業の機密情報を守れ!インサイダー脅威対策

サイバー攻撃や情報漏洩のニュースが報じられるなか、企業の情報セキュリティにおいては内部からの脅威(インサイダー脅威)も関心を集めています。外部からのハッキングや不正アクセス対策に注力する企業は多いですが、実は企業内部からも情報漏洩は発生します。意図的な不正行為だけでなく、従業員の不注意や外部からの攻撃によるアカウント乗っ取りなど、インサイダー脅威の形はさまざまです。

こうした脅威を適切に対処できなければ、企業の信頼・競争力の低下、法規制違反による罰則、情報流出による損害といった深刻な影響を引き起こす可能性が高まります。

インサイダー脅威とは

企業の情報セキュリティを脅かす要因として、「インサイダー脅威(Insider Threat)」が近年注目されています。これは、企業内部の従業員や取引先などが、意図的または偶発的に機密情報を漏洩・悪用してしまうリスクを指します。

情報セキュリティ10大脅威 2024 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

外部からのサイバー攻撃とは異なり、企業の内部ネットワークやデータに正規のアクセス権を持つ人物が関与するため、発見や防止が難しいのが特徴です。そのため、企業にとっては「見えにくい脅威」として対応が遅れやすく、被害が発生した際の影響が大きくなる可能性があります。

インサイダー脅威にはさまざまなタイプが存在し、大きく分類すると以下の3タイプに分けられるでしょう。このタイプにより、それぞれ適した対策が求められることになります。

内部不正を行う者
(悪意ある内部者)
競合他社への情報漏洩、機密データの不正持ち出し、個人的な目的でのデータ改ざん
過失による情報漏洩者
(不注意な内部者)
誤って機密データを外部と共有、弱いパスワードの使用、メールやチャットでの不適切なデータ送信
不正アクセスの踏み台となる者
(資格情報を盗まれた内部者)
フィッシング攻撃などによりアカウントの乗っ取り、外部ハッカーなどに認証情報が流出

なぜインサイダー脅威が問題なのか

インサイダー脅威によって企業へどんな影響があるのか、例も交えて解説します。

企業の信頼・ブランド価値の低下

情報漏洩や不正アクセスが発覚すると、企業の信用が大きく損なわれます。特に、顧客情報や取引先の機密データが流出した場合、企業イメージの悪化につながり、顧客離れや新規取引の減少といった影響を受ける可能性があります。

インサイダー情報漏洩での影響例

  • 1.元従業員が競合他社へ大量の営業データを持ち出した。(企業の市場競争力低下)
  • 2.情報流出が発覚後、企業の信頼が失われ、顧客が他社へ流出した。
  • 3.株価の下落や経営陣の責任問題に発展した。

法規制違反による罰則リスク

日本国内だけでなく、国際的にも個人情報や機密情報の保護に関する法律・規制が強化されています。インサイダー脅威による情報漏洩が発生すると、企業は罰則や制裁金を科されるリスクが高まります。

関連する主要な法規制

  • 個人情報保護法(日本):顧客データの管理不備による罰則あり
  • GDPR(EU一般データ保護規則):データ漏洩が発生した場合に最大売上高の4%の制裁金が科される可能性あり
  • SOX法(米国企業改革法):内部統制不備などによる罰則や経営者への刑事罰あり

インサイダーによる個人情報流出による例

  • 1.元従業員が顧客データ数十万件を私的に持ち出し、外部に流出させた。
  • 2.企業は個人情報保護法違反で罰則を受け、信用が失墜した。
  • 3.被害者への賠償・訴訟対応に、数億円のコストが発生した。

競争優位性の喪失

企業が持つ営業戦略、技術情報、研究開発データ、顧客リストなどの機密情報が外部に流出すると、競争力を大きく損なう可能性があります。特に、業界トップの企業ほど、機密情報の流出が致命的な打撃となります。

機密技術の持ち出しによる競争力低下の例

  • 1.製造業の技術者が、退職時に独自開発の製造技術データを持ち出し、競合他社へ転職した。
  • 2.転職先の競合企業がその技術を活用し、市場で優位に立つことになった。
  • 3.持ち出された企業が特許侵害訴訟を起こしたが、流出した情報を完全には取り戻せず、損害が拡大した。

被害の発覚が遅れ、影響が長期化

インサイダー脅威の大きな問題点は、外部攻撃と異なり、被害がすぐには発覚しにくいことにあります。例えば、従業員が数ヶ月~数年にわたり機密情報を少しずつ持ち出していた場合、問題が発覚した時には既に大きな損害が生じている可能性があるからです。

長期間にわたるデータ流出の例

  • 1.管理職が長年にわたり、顧客情報を個人的に外部ストレージに保存していた。
  • 2.その管理職が、競合他社と取引を行っていたことが発覚した。
  • 3.企業は早期検知できず対応が遅れ、数年分の損害を受けた。

企業内部のモラル・労働環境の悪化

企業内で情報漏洩が発生すると、従業員の間で不信感が広がり、組織の士気が低下します。また、企業が適切な対策を講じない場合、従業員の間に「情報管理に対する意識が低い企業」という認識が広まり、さらなるリスクが生じる可能性があります。

企業文化の悪化が招くリスク

  • セキュリティ意識の低下 → 他の従業員も同様の不正を行う可能性
  • 内部告発の増加 → メディア報道や法的問題に発展
  • 退職者の増加 → 企業全体の生産性低下

インサイダー脅威は、企業にとって「見えにくいものであり、深刻な影響を及ぼすリスク」となります。そのため、インサイダー脅威を早期に検知・防止する仕組みを検討・構築することが重要となってきます。

また、仕組みを導入するだけでは十分ではありません。継続的な運用を行い、効果的に活用できる状態を維持することが、インサイダー脅威への本質的な対策となります。

実施すべきインサイダー脅威への対策

インサイダー脅威は、企業の機密情報や顧客データを危険にさらす深刻なリスクです。外部からのサイバー攻撃と異なり、内部の従業員や関係者による情報漏洩や不正アクセスは、検知が遅れやすく、被害が長期化しやすいという特徴があります。また、企業がインサイダー脅威から機密情報を守るためには、技術的な対策だけでなく、組織的なルール整備や従業員の意識向上も欠かせません。

リスクを最小限に抑えるために、企業が今すぐ実施すべき基本的な対策を以下に整理しました。

アクセス権限の棚卸しと最小権限の原則

「とりあえずの権限付与」は情報漏洩リスクを高める原因です。定期的な棚卸しを行い、不要なアクセス権を削除する運用を確立しましょう。

  • 不要なアクセス権を定期的に見直し、最小限の権限のみを付与
  • 部署異動や退職者のアクセス権を速やかに変更・削除
  • 機密データには閲覧のみ・編集不可など細かい権限管理を実施

異常検知機能の導入とリアルタイムアラートの設定

インサイダー脅威は時間をかけて進行するケースが多いため、異常行動を早期に察知できる仕組みが不可欠です。

  • 異常なダウンロードやアクセスをリアルタイムで検知し、管理者に即時通知
  • 不審なデバイスや通常と異なるIPアドレスからのアクセスを自動遮断
  • AIや機械学習を活用した異常行動検知システムを導入し、内部の不正行動を事前に察知

データ共有ルールの策定とポリシーの明確化

「簡単に共有できる環境」は、便利な一方でリスクが高くなりがちです。明確なルールを定め、従業員全体に周知することが重要です。

  • 外部とのデータ共有を必要最小限に制限し、社内ポリシーを明確化
  • 機密データにはウォーターマーク(透かし)を適用し、不正なスクリーンショットや印刷を抑止
  • 共有リンクには有効期限やパスワード保護を必須化し、アクセスを厳格に管理

従業員へのセキュリティ教育と意識向上

最も重要なセキュリティ対策は「従業員の意識」です。技術的な防御策だけでなく、社員一人ひとりが適切な行動を取れるような環境づくりが不可欠となってきます。

  • 年1~2回のセキュリティ研修を実施し、情報管理の重要性を周知
  • パスワード管理・フィッシング攻撃対策・ソーシャルエンジニアリングに関する教育を強化
  • 企業の情報管理ポリシーを社内ポータルやガイドラインとして常時公開し、従業員が容易にアクセスできるようにする

監査ログの定期チェックと不審なアクセスの早期発見

「問題が発覚してから」調査するのではなく、監査ログを活用し通常とは異なる動きをいち早く検出できる仕組みを整えましょう。

  • 週次・月次でアクセスログをチェックし、異常なアクティビティを確認
  • 退職予定者や特権ユーザーの行動を重点的に監視
  • データアクセス履歴を記録し、特定のファイルやフォルダの利用状況を定期的に分析

インシデント対応フローの整備

問題が起きた後の対応が不明確だと、被害が拡大する可能性があります。事前に迅速な対応フローを用意し、リスクを最小限に抑えることが重要です。

  • 情報漏洩が発生した際の対応手順を明確化(IT部門・法務・経営陣の連携フローを策定)
  • 迅速に原因を特定し、影響範囲を最小限に抑えるための対応体制を整備
  • 過去の事例を分析し、再発防止策を組み込むPDCAサイクルを確立

企業成長に合わせたセキュリティ対策の継続的な改善

企業の成長や業務の変化に伴い、セキュリティ対策も柔軟に進化させることが必要です。「導入して終わり」ではなく、継続的な見直しを行っていきましょう。

  • アクセス管理ポリシーの見直し(半期ごとに更新など)
  • 新たなセキュリティツールや機能の導入検討
  • クラウドサービスや外部システムとの連携管理を強化

インサイダー脅威に対処するためには、「技術的な対策」「ルール整備」「従業員教育」の3つを、バランスよく組み合わせることを意識してみましょう。

インサイダー脅威対策に適切なソリューションを

インサイダー脅威は、企業の情報資産を脅かす重大なリスクです。しかし、適切な「アクセス管理」「異常検知」「データ保護」の仕組みを導入し、継続的に運用することで、こうした脅威を未然に防ぐことができます。

特に、クラウド環境でのデータ管理が主流となる今、セキュリティと利便性を両立するプラットフォームの活用が鍵となります。社内外のデータ共有を適切に制御し、不正なアクセスや情報の持ち出しを防ぐ、そんなソリューションがあれば、企業のセキュリティはさらに強固なものとなるでしょう。

では、具体的にどのようなソリューションを導入すれば、インサイダー脅威を効果的に抑止できるのか?次回の記事では、クラウドサービスの中でも強固なセキュリティを実現する、Boxソリューションについて解説します。

さいごに

インサイダー脅威は企業にとって大きなリスクですが、強固なセキュリティ機能を持ち合わせたソリューションと適切な運用を組み合わせることで、データの不正持ち出しや漏洩を未然に防ぐことが可能になります。「社内だから大丈夫」ではなく、常にリスクを意識したデータ管理を行うことがとても大切です。企業が安心してデータ管理できる環境をどのように実現するか、ぜひ検討いただけたらと思います。

プロフィール

野崎 佳子

野崎 佳子
クラウドサービスの提案と構築からカスタマーサクセスマネジメント活動まで、幅広い業務を担当しています。
Boxを中心とした情報発信を行っていきたいと思います。

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