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文系ビジネスパーソン向け、生成AI活用術とは?

コーポレートコミュニケーション室で企業ブランディングを担当している山本です。

「ちょっと見なかった間に、とんでもない事になっているなぁ...」

つい最近、軽い驚きと焦りを感じた出来事がありました。某フリマアプリで使わなくなったカメラを出品する際、実装されているAI作文機能を使ったときのことです。

今年の初めごろは全く使い物にならず手打ちで1時間以上時間がかかっていたのに、今回は製品名を入力した時点で、カメラの詳細な仕様、性能、特長などを、ビッシリ正確に書き込んでくれる。おかげで所要時間はわずか10分程度でした。

2か月前と比較して、約5~6倍の生産性......。
実に「恐ろしい変化」ではないでしょうか?

誰かが便利さを提供してくれるのはありがたいことですが、妙な焦りを感じてしまいました。私を含めエンジニア的なスキルを持っていない人は、完全に置き去りになってしまうのではないかと。

この記事は、まだ生成AIの活用を取り入れきれていないビジネスパーソンに向けて書いています。技術畑でない方でも、こんな考え方で生成AIを使えば、身近な問題の解決が驚くほどスムーズになるということをお伝えしたいと思います。

2023年末のLAC AI Dayのプレゼンに込めたメッセージとは?

「Nonテクニカル分野の生成AI活用術」これは、私が2023年12月にLAC AI Dayという自社イベント行ったプレゼンテーションのタイトルでした。

「Nonテクニカル分野の生成AI活用術」発表の様子

ラックでは、2023年5月に部署横断のAI活用研究組織「GAI CoE」が発足しました。その後生成AIの事業活用に取り組む精鋭エンジニアたちが活躍しています。その一方で、関心はあるものの手つかずの人達も大勢いるのが現状です。特に私のような、事務職系の社員にその傾向は強いと感じます。

※ プレスリリース:ラック、生成AIの活用体制を整備し全従業員が業務利用を開始

その技術者でない私が、どう生成AIの活用をしていけば、自分や周囲の文系ビジネスパーソンが適応していけるのか?そのような啓発ができたらと考えたプレゼンでした。

生成AIで相手を「納得、共感させる説明力」を手に入れる

このプレゼンのテーマに設定したのは、「伝わる(目的を果たす)コミュニケーション」です。ビジネスとは誰かの課題を解決することです。そして課題解決には必ず人とのコミュニケーションが必要となります。そのコミュニケーション支援に生成AIをガッツリ活用すれば生産性もあがるし、おのずと成果も出やすくなるという理由からです。

生成AIで「伝わる」コミュニケーションをやってみよう!そのためには目的・ゴール設定と2W1H(誰に、何を、どうやって)が大切

「何の目的で生成AIを使うのか?そしてどんな成果物を得たいのか?」というゴールをイメージできていないと、成果のでる仕事にはなりにくいと言わざるを得ません。

例えば、以下のようなゴールです。

  • 上司にビジネスプランの承認を得たい
  • 役員に事業予算の稟議を通したい
  • 銀行を説得して、融資をしてもらいたい
  • 顧客を満足させて、注文をもらいたい

これらのよくありがちなシーンで、相手を「納得、共感させる説明力」が手に入るとすれば、あなたにどんな未来が待っているでしょうか?

具体的なケースを挙げて、ビジネスコミュニケーションに生成AIを活用する例をストーリー仕立てで説明したので、その内容をかいつまんで説明します。

生成AI活用シーン:経営者とのコミュニケーション編

ここでは、役員から突然降ってきた指令への対処についてモデルケースを作ってみました。

役員から「同業他社でのセキュリティ事故、うちは大丈夫なのか?すぐに調べて報告しなさい!」と言われたら、あなたはどうする?

「おい、同業他社でのセキュリティ事故、うちは大丈夫なのか?すぐに調べて報告しなさい!」

良く分かっていない役員から、漠然とした感じで報告しろと言われて困惑するやつです。おそらくその役員自体も、どんな報告を得たいのかイメージできていない恐れがあります。しかしそんな不満を漏らしても仕方がありません。

ここでの目的は、
「いかに役員の懸念事項、心配ごとを捕捉して、納得させる説明をすること」
とします。さらに、
「できれば役員が経営判断に役立つと感じる提案」
になるようにもしたいところです。

ゴールを設定し、そこから逆算して必要な情報を集め、最終的なアウトプット(報告書、提案書)を作っていく。そんな全体感を最初に描いていきます。

ゴールを、目的と得たい結果+2W1Hで設定。ゴールから逆算して準備。

解決の手順を想像するに、以下のような点について順を追って調べていけば、報告内容は抜けもれなくカバーできるでしょう。

  • 1)役員が気にしている事故を調べて特定する
  • 2)事故の要因や被害範囲、被害金額を調べる
  • 3)対策の候補を調べる
  • 4)自社に当てはめて、リスクがある箇所を洗い出す
  • 5)既にやっている施策でカバーするところ、新たに施策投入すべきことを洗い出す
  • 6)各施策の費用と、損害発生時の被害を対比し、優先度をつける
  • 7)役員に判断を仰ぐための、本命案、予備案、捨て案の3つをつくる
  • 8)プレゼントークシナリオを作って、本番に挑む

この作業を自分でネット検索したり、書いたりする場合は、3営業日はかかりっきりになりそうな感じです。でも生成AIを使えば、8つのポイントについて質問文章を考えて、調べてもらうことができます。

この想定ケースのプレゼンを作成する前提で、生成AIに質問を複数回投げたところ、必要な回答を得るのに2時間ほど、10ページほどの資料にまとめるのにさらに2時間、合計4時間程度を要しました。自分だけでやる場合の予測時間、3営業日(8時間×3日)と比較すると約6倍のスピードアップになります。

もうひとつの効果、思考回路が変わる?

得られるメリットはスピードだけではありません。ゴールから生成AIを使い逆算して考えることで、思考サイクルが全く変わってくるのです。

もし自分で必死に調べてやっていたら、手元の作業に集中する「作業者」の視点に偏ってしまいます。集めた情報をどう取捨選択すればいいのかに迷い、全体感が見えなくなるかも知れません。

しかし、生成AIに作業を任せた場合は「どう役員を説得するのが効果的か?」という目的・目標に思考を集中し「コミュニケーションの設計者」の視点に立つことができます。

たとえ収集した情報が膨大になっても、プレゼン時間内に相手に伝えられる情報量、優先順位の高い項目が何かをスムーズに判断する余裕ができます。

特に、前項の8番目の「役員向けのプレゼンシナリオとトーク原稿を作成させる」というアイデアは、「設計者視点」ならではのもので「作業者視点」では出てこなかったように思います。

経営幹部の最大の関心事は、ビジネス機会の喪失リスクと対策費用のバランスにあります。そんな役員に対するプレゼンの冒頭は、「事故による事業リスクと損失」の話から入って1~2分でサマリーするのが適切でしょう。そのトーク原稿を生成AIに書いてもらうと、以下のようになります。

「報告を求められた件ですが、~~~については大丈夫でした。その一方で○○○には新たな問題点が見つかりました。その問題点が原因で当社が被害にあった場合最大○○億円の被害が想定されます。しかし○○○向けの新たな対策を講じればその被害を最小限に防ぐことができます。プランは3つあります。お勧めはA案ですが、B案、C案と、費用を絞り込んだ施策と合わせてご検討頂けないかと思います。それでは、詳細説明に入らせていただいてよろしいでしょうか?」

このような、滑らかな前説(サマリー)なども、生成AIを活用し、文字数を制限して生成すれば大まかなたたき台はすぐに作ることができます。

これを聞いた役員は「これから何の話が始まり、判断する要点」がわかり、聞く態勢に入ってくれるのではないでしょうか?少なくとも「要点は何だ?」といったお叱りの言葉が飛んでくることは無くなると思います。

なお、生成AIはあくまで素早くたたき台を出してくれる便利なツールとして考え、過度な期待はしない方がよいと思います。

生成AIが出力した結果の良し悪しの判断、より「伝わる」ように修正を加える文章能力は必要。

生成AIでコミュニケーションを設計(デザイン)できる人になろう

生成AIに「いかに正確に、完璧に答えてくれるか?」を求めても、きっとゴールにたどり着くことはないのだと思います。要求することが人によって異なるからです。

でも、視点を変え「目的を果たすために必要な、情報収集とコミュニケーション設計をするツール」としてとらえると、まったく違った景色が見えてきます。

何かの成果を出すための提案や協議をするときは、人と人とのコミュニケーションが主体になります。その時、相手を納得・共感させるための、言葉やストーリーを紡ぐ道具を味方に付けることができれば、あなたはビジネスでも人生でも、価値ある対話を生み出せるようになるのではないでしょうか?

参考のために生成AIへの問いかけ(プロンプト)作りのポイントをまとめた図を貼っておきます。

プランニングを爆速化するGAI活用術

生成AIが出力した結果は、抜け落ちや、補強するポイントがないか、必ずチェックします。設計図どおりの狙った結果を得るために、邪魔になる情報や説明は取り払うなど、情報の取捨選択は自分の手でやることがとても重要です。

さいごに

さいごに、お試し用として、ChatGPT用のサンプルプロンプトを記載しておきます。この記事に書いたような効果が実感できるか、ぜひお試しください。

また、当社では生成AIのビジネス導入、活用相談もお受けしています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

お試し用プロンプト1/セキュリティ事故報告

経営陣にセキュリティ事故報告をする際のサンプルプロンプトです。報告書などは型がある程度決まっているので、実用的な回答が返ってきます。

※ 質問文1と質問文2は、別々に投げた方がよい。

<プロンプト/質問文1>
役員にセキュリティ事故報告を求められています。報告書で求められそうなポイントを教えてください。

<プロンプト/質問文2>
セキュリティ対策実施のためには、費用がかかります。報告の中に、対策実施の予算案を入れて、プレゼンテーションをしたいと思います。最終的に、問題点への理解と、予算承認を取り付けたいと思います。プレゼンの冒頭に、導入として今日話す内容について、エグゼクティブサマリーを2分ほどで説明したいと思います。その際のトークスクリプトを400字程度で書いてください。
内容は、今日の報告内容が何で、どういう判断/承認をすればいいのかを、理解してもらうのが目的です。トークスクリプトには、被害発生した場合の損害予想金額が10億円であること、対策費用が1000万円であることを、含んでください。

お試し用プロンプト2/お悩み相談

ChatGPTに1on1してもらう、お悩み相談プロンプトです。悩みを入力すると、コーチ、メンターに成り代わって、ChatGPTが受け答えしてくれます。セルフコーチングに利用する以外に、1on1で部下から相談を受けた時に答える内容、質問の仕方の参考として使うこともできます。

<プロンプト/質問文>
これから部下からの悩みの相談を入力します。
あなたは、会社の仕事や人間関係について相談を受ける上司になりきって、1つの相談に対して、1つの応答を会話形式で返してください。応答は、最初に相談に対して、感情に寄りそう言葉をかけてください。
次に、相談者に対して、悩みの本質を掘り下げていくための質問を1つ投げ返してください。

相談者への質問は、相談者に何が起きたかを確認することや、その時の感情を聞いたり、違う視点で考えてみるなどのコーチングやカウンセリングで使われる問いかけ、投げかけのテクニックを用いてください。また、心理的安全性が保たれるような、柔らかな口調でお願いします。

また、2-3回の対話が進んだら、適切なタイミングで
「何か私に手助けして欲しいことがあれば、何でも言ってください」
と伝えてください。

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