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こんにちは、新規事業部の高橋です。
皆さん、私たちが京都市の住民とオープンデータを制作する、「京都市データソン」の活動に取り組んだことを覚えていますか?
そうです、今年の5月に記事を公開したそれです。
京都市データソンでは、約1か月かけて参加者がオープンデータを作成しました。その際、オープンデータを作りたい人と集めたい人、活用したい人は異なるのではないかという仮説を立てました。
今回はその仮説を確かめる、京都市の住民がオープンデータを"集める"イベント「地下鉄階段チャレンジ」の活動をご紹介します。
「データソン」のその先へ
京都市データソンは、市民でもオープンデータを生み出す側の担い手になれるのではないかという仮説を検証したものでした。イベントを通して得られた確かな手応えとともに、想起されたデータを収集する次のフェーズに挑んだのが、今回のイベント「地下鉄階段チャレンジ」です。
「オープンデータを作りたい人と集めたい人、活用したい人は異なる」という仮説
オープンデータは、公開することが目的ではなく、活用されてはじめて価値が出ると考えられます。そのため、誰が、どのような場面で必要として、どう価値を生むか(課題を解決するか)までの一連を設計できることが理想です。
一方で、逆説的になるかもしれませんが、解決したい課題に活かせるデータは、存在も生成場所も課題の現場から遠く、また関与している方々が異なることにより、うまく価値の連携がとれていないということもままあります。
京都市データソンでは"作りたい人"に注力したイベントでした。一方で今回の「地下鉄階段チャレンジ」は"集めたい人"にフォーカスして設計しています。
データを集めたい人を、どう集めるか?
データを黙々と粛々と集めたい人は、極めて少ないだろうということは想定できていたので、違う形で興味関心を引き、"結果的にデータが集まる"という仕組みを考えました。
それが「夏休みの自由研究」です。プログラミングをはじめ情報系の科目も増える世代に向けて、データや情報といった形のないリアリティに欠ける領域を、体験型のイベントとして経験してもらうことで理解や学びを提供する。その結果として我々はデータを集めるという目論見です。今回集めたいデータは、地下鉄の階段に関するデータでした。そこで、鉄道好きな小学生が、自由研究のネタにもなって地下鉄を巡れるイベントがあったら喜んで参加してくれるのではないかと考え、「地下鉄階段チャレンジ」を企画しました。
「地下鉄階段チャレンジ」の特徴
どう参加者をモチベートしつつ、運営側として欲しい結果を得られたのかと、チャレンジの特徴をご紹介します。
特徴1:目的の置き換え
今回のイベントの対象となる参加者は、小学校4年生~6年生としました。
データが、活用を、と中長期的な価値を説明してもなかなかまだその理解が難しい世代です。
そのため、直近の達成目標、具体的にはイベント当日に得られる目標をいくつか設定することにしました。
1つは、参加者全員で全駅のデータを集める"コンプリート"を目指すこと。一人ひとり個別の目標とせずに全員で取り組むことで、進捗も実感でき、飽きずに最後まで積極的に参加してもらえました。
また、集まったデータの量(階段の段数)に応じたカードをプレゼントすることでも、常に次へ次へとモチベーションを維持できる仕掛けを工夫してみました。
もう1つは、「どこかの駅にある謎のプレート(板)」を探すこと。宝探し要素ですね。詳しくは次の項目に記載しますが、宝を探す過程で地下鉄の駅の情報を集めていくという仕掛けです。
特徴2:学びのある謎解き要素
「謎のプレート」を探す目的自体をミッションと呼び、今流行りの謎解きゲームのワクワク感を演出しました。謎のプレートはそれだけでは情報が不足しており見つけるのは困難ですが、駅の階段の段数を測定していくとヒントが出てくる仕組みです。
今回は京都市情報化推進室及び京都市交通局の協力のもとで実施した、市営地下鉄をフィールドとしたイベントなので、ヒントの出し方も地下鉄ならではの特色を出しました。例えばヒントが入る封筒には、駅のコインロッカーのカギと京都の古地図(この古地図も実は京都市のオープンデータ!)が入っており、ロッカーを見つけて開けると今度は10円玉と11桁の数字が入っているなど......。
勘が良い方は10円玉と11桁の数字で公衆電話とすぐに気付かれたかと思いますが、携帯電話が普及した昨今では公衆電話に触れたことのない小学生がほとんど。幸か不幸か、携帯キャリアの通信不具合の事例があったタイミングだったので、重要インフラとしての公衆電話を再認識できたという感想もいただきました。
特徴3:自由研究の種、一式
イベントの最後は会場に集合して、集めてきたデータを全員で1枚のA0サイズ(縦約119cm×横約84cm)のシートにまとめました。このような作業を通して、それぞれが集めてきたデータが意味のある情報の集まりになっていくことを体験してもらいました。(後日、A0シートの内容をExcel形式に焼き直し、参加者に成果物として共有しました)
また、1日、地下鉄を巡って気付いたことをシェアする発表の機会もあり、他の参加者の発表も自由研究の考察のヒントにしてもらいました。さらに、発表内容にSDGsのどの課題に貢献できるかを、SDGsシールを貼ることで評価し合うプロセスも加えました。データとそこからの気付きと、気付きが貢献できるSDGs領域をセットにした、自由研究の種を持ち帰ってもらいました。
データの活用ステージへ
今回のイベントを通して、次の活用ステージは見えてきたのでしょうか?
データを生み出し続ける仕組み作りに向けて
今回の試行は仮説の検証という意味では確認がとれたと言えるものの、集まったデータの精度やデータ量の補強という意味では改善の余地がある結果となりました。
また、夏休みのイベントとして一時的な取り組みにとどまるものであったため、継続的にデータを収集や補強できる仕組み作りにはさらなる工夫が求められることも分かりました。そのためには、一過性の企画にせずに、企画の規模の大小こだわらずに、データを作成したり共有と公開したりする取り組みを行いつつ、その地域の関係者と共感のコミュニティを形成していくことがデータのライフサイクルを継続的に回し続けるポイントだと感じています。
今後は、より多彩な領域への応用展開も視野に入れつつ、京都市営地下鉄の階段というデータが改めて価値があるということも再確認できたため、データを活用してもらうための試みにもトライしてみたいと考えています。
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