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なぜ、ラックが京都でデータソンをやったのか?新規事業開発部の新たな取り組み

地方自治体で、地域活性化に悩んでいる担当者の方は多いのではないでしょうか?

地域事業のネタを生み出すにも、情報をどうやって集めるのか課題が多いと思います。地域のことは、そこに住む人たちが一番知っているはずなので、自治体が作成することが多いオープンデータを住民でも作成し公開し、誰でも制限なく利用できるようにすることから、地域課題解決や活性化につながることもあるのではないでしょうか。ラックの新規事業である"地域商社事業"では、そんな世の中になったらいいなと考え活動しています。地域商社は、各地の自治体、事業者、住民の皆さまとその地域に必要な仕組みを、共に創っていくことを目指しています。

今回は2022年2月から3月にかけて京都市と企画・実行した、京都市の住民がオープンデータを制作するイベント「京都市データソン」の活動をご紹介します。

京都での「データソン」企画が生まれた背景

「使いたいデータが無いなら、自分たちで作ればいいじゃない」
そんな逆転の発想がきっかけになった京都での「データソン」はどのように生まれたのでしょうか。

「オープンデータ3.0」の世の中とは

「オープンデータ3.0」という定義は世の中にはありません、私の造語です。
一般的には「1.0」がデータ化とデータ公開を促進させること、「2.0」がデータの利活用やその結果として社会課題の解決と言われます。
では「3.0」は何なのでしょう。これまでの「データを活用して課題を解決する」とは逆のアプローチで、「解決したい課題に、データを活用する。データが無ければ作り、課題を解決する」という考え方です。

きっかけは、前年の「アプリハッカソン」

2021年の夏、京都リサーチパークが主催する「KRPフェス2021」で、京都市オープンデータポータルサイトのデータを利用してアプリケーションを制作するイベント「アプリハッカソン」を企画・実行しました。

京都リサーチパーク -イノベーションが生まれる「まち」

京都市オープンデータポータルサイト

そこでハッカソンの参加者から出た声が「(アプリに使いたい)データが無い」でした。京都市は622件のオープンデータを公開(2022年4月30日現在)しており、他の同規模自治体と比較しても公開数が多いと認識していたために、この反応は意外なものでした。私は、自治体側が整備・公開を進めるべきデータと、住民が活用したい/しやすいデータは違うのではないかという「仮説」を持ちました。

京都市との出会いからはじまった企画

「アプリハッカソン」では、京都市の総合企画局情報化推進室の担当者から、京都市のオープンデータの人気ランキングや活用事例などを紹介いただいたので、ハッカソン終了後に御礼と結果報告を兼ねて、上記「仮説」を話してみました。すると、「3.0構想」と「仮説」の検討の価値がありそうという回答が!その検証の手段として、参加者がデータを作るという「データソン」という活動があることを紹介してもらい、企画設計を共同で進める流れとなりました。

データソンの狙い〜オープンデータを〜次世代3.0モデルへ〜

「データソン」とはどのような企画なのか?

オープンデータを作成、編集するイベント「データソン」は、全国各地で開催されています。
そのデータソンと、今回私たちが企画・実行したデータソンの違いを特徴としてご紹介します。

特徴1:「作りたいデータ」「欲しいデータ」をトリガーとするデータドリブン型アプローチ

課題設定から入るのではなく、参加者(住民の皆さん)が作りたい、欲しいとするデータを作ろうという方針です。データ作成作業が具体的に進みやすく、またモチベーションの維持が期待できると考えました。

データソンのコンセプト〜データドリブンの可能性〜

特徴2:「データを作ること」に特化したゴール設計

データを作るのは当然ですが、その先のデータの活用と課題解決までを求めませんでした。
これは、参加者の負担軽減という意味もありますが、データ作成を担う人とデータ活用を目指す人は同一人物でない可能性がある(指向の違い)と考えたからです。

データソンのゴール〜データを作るまで、と開き直る〜

特徴3:1ヶ月をかけた長期イベント

今回のデータソンは3つのパートで構成されています。
初日をDay1として、ここでは主に知識・情報のインプットを中心としつつも、集合形式として参加者同士のディスカッションなど約半日のコンテンツとしました。

対面で参加者同士ディスカッションを行う様子

Day1翌日から約1ヶ月をWork期間と設定し、参加者が自らデータを作成する期間とします。その間、事務局と参加者はコミュニケーションツールSlackを活用して、オンラインで連絡を取り合います。最終日はDay2で、各参加者が作成したデータを発表し、表彰等を行いました。

参加者が作成したデータを発表する様子

なぜ京都で「データソン」を行ったのか?

データソンを実行することで、ラックは何をしたかったのか。
地域との共創を目指す新規事業開発部の取り組みをお話しします。

新規事業開発部「town/SmartX構想」の一翼としての地域商社事業

これまでサイバー空間を守ってきたラックは、今後は街を守ることを新規事業として目指し、スマートシティ・スーパーシティ向け「town/SmartX事業構想」を2020年に発表しました。

街を守る方法として、データを安全に見守るプラットフォーム「town」と、そのtownに連接するIoT向けのセキュアなサービス群「SmartX」に加え、「town」「SmartX」も活用しながら地域でサービスや事業を開発していく「地域商社事業"黒こ"」が存在し、連携して街を守る活動を推進しています。

より詳しく知るにはこちら

より詳しく知るにはこちら

townとは、地域で活用されるIoTセンサーを安全に運用していくためのプラットフォームを、段階的に実現していくサービスです。攻撃者がいる不正アクセスに対抗するためのサイバーセキュリティの観点だけではなく、日常のデータから地域内での異常事象の発見、もしくは予見を実現することを目指しています。

地域と共創した事業創造

「地域商社"黒こ"」では特定のサービス(売り物)を持たず、地域ごとに合った事業の創出により、街を守ります。そのため、地域の自治体、事業者、住民の皆さまとの連携無くして事業の創出はあり得ません。
「京都市データソン」は、まさに京都市様と京都の住民の皆さまと共に、事業の種、課題解決の種を育てはじめた第一歩となります。

ICT・IoTのチカラで地域課題を解決する地域商社事業『黒こ』(PDF 996.3 KB)

地域商社

京都の魅力、京都のポテンシャル

ラックでは2019年から、京都市にある京都リサーチパークのテレワーク施設を利用しています。観光産業が盛んな京都市は、新型コロナウイルスによる影響に直面をしていますが、学生の多さや長い歴史に根付いた文化・伝統といった魅力は健在です。
また昔から都として様々な文化が入りこんでいた京都市は「新しいもの好き」なのではという仮説もあり、共創できるポテンシャルを強く感じます。

※ 京都市は、お茶を差し置いて「コーヒーの世帯当たりの支出額が全国1位」(とうけいでみるきょうとより)

「データソン」のその先へ

データソンは結果として上手くいったのか、実際のところどうだったのか。
また、次はどんな方向に向かっていくのかをご紹介します。

想像以上の興味深いデータの数々

2022年4月に、「京都市データソン」から作成された6件のデータセットが、京都市オープンデータポータルから公開されました。そのデータはどれも自治体では着想や収集が及びにくい斬新さを持ち合わせており、想像以上の成果となりました。Workの作成期間中、参加者の方々は苦悩をしつつも、自身が興味関心を持てるデータの作成を模索し続けてくれた結果だと感じています。

オープンデータ化された参加者作成のデータの一例に、京都市営地下鉄駅情報(地上~ホームの経路情報)があります。毎日地下鉄の階段を多く昇降することから、どれくらい健康に良いことをしているのかを見える化するため段数に着目しました。このデータは、作成者が期間中に実際に全駅に赴き、自身の足でカウントしながら作成した苦労の結晶です。

京都市営地下鉄駅情報(地上~ホームの経路情報) | 京都市オープンデータポータルサイト

データは健康指標として活用するだけでなく、交通弱者が地下鉄を利用する際の負担を軽減できるかもしれない点が、重要なポイントです。データソンで使うデータが欲しいがために作成したものが、別の社会課題の解決に役立つ可能性を秘めているのです。

継続的な向上支援と、実証・実装により目指す社会課題の解決

「データソン」はデータを作るまでをゴールとして一旦区切りをつけていますが、そこで終わりにするつもりはありません。継続的にデータの質・量の向上を支援していきます。その先には、今回のデータを活用したサービスやソリューションの開発、京都市内での実証、課題解決のための社会実装と、さらに京都市、住民の皆さまと連携してデータを育てていくフェーズに移行します。「データソン」のその後の経過は、また次回のLAC WATCHでご紹介いたします。

誰か任せにしない、当事者である市民がテクノロジーを活用して地域の課題を解決するシビックテックを目指して、ラックは今後も地域の皆さまと連携していきます。

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