ラック社員が執筆した書籍、『情報戦、心理戦、そして認知戦』が発刊
2023年12月11日 | お知らせ
このたび、ラックの研究開発部門である「サイバー・グリッド・ジャパン」の佐藤 雅俊および上田 篤盛が執筆した書籍、『情報戦、心理戦、そして認知戦』が、2023年12月12日に発刊されます。
昨今、ロシアのウクライナ侵略によって引き起こされた戦争(以下、ウクライナ戦争)は、「情報戦」とも言われています。戦場においては指揮システムなどにサイバー攻撃を行い、非戦場では偽情報を流布して自国のプロパガンダとするなどの情報戦が展開されてきました。通常の戦力と一体になった非軍事手段を用いるハイブリッド戦争と呼ぶにふさわしい状況となっています。
ウクライナ戦争では、SNSによる情報操作や偽情報で相手の認知を誤った方向へ導く「認知戦」への注目度が上がりました。認知戦の本質は相手の心に影響を与え、支配することにあります。この点において古来使われてきた心理戦と同様ですが、認知戦は発達したICT環境の中に誕生した新たな戦いともいえます。情報発信のツールとしてSNSが登場した2010年代の「アラブの春」では、SNSによる民主化デモへの参加が呼びかけられたことが記憶に新しいのではないでしょうか。この認知戦の先には、人間の心理や認知の領域を超えてAIが自律的な意思決定を行い、自律型無人機が戦場を飛びかうAI戦争が見え隠れしています。
本書では、過去の情報戦と心理戦の歴史を紐解きながら、2022年末に閣議決定された安全保障関連3文書を踏まえ、日本が近い将来直面するであろうサイバー脅威や、起こりうる戦争に対処するための視点を提示しています。考察においては、地域情勢やAIの技術革新の流れから認知戦のシナリオを予測しました。2030年における台湾有事の可能性に対する危機感を共有しつつ、臨場感をもって読み進めていただけることと思います。
本書の内容が、今後の世界情勢や情報をめぐる戦いへの理解の一助になれたら幸いです。
著者:佐藤 雅俊、上田 篤盛
出版社:並木書房
価格:2,420円(税込)
発売日:2023年12月12日
ISBN-10:4890634436
ISBN-13:978-4890634439
目次
- はじめに
- 第1章 心理戦とその運用
- 第2章 心理戦の歴史的教訓
- 第3章 日本軍の心理戦
- 第4章 冷戦初期の米ソの心理戦
- 第5章 米国のメディア戦と報道の統制
- 第6章 米国の情報戦および情報作戦
- 第7章 中国の情報戦と新領域での戦い
- 第8章 ロシアによる情報戦とハイブリッド戦争
- 第9章 ウクライナ戦争と情報戦
- 第10章 新時代の認知戦と未来予測
- 終章 わが国および企業のとるべき対策
- 解題 認知戦|日本にも迫り来る脅威
廣瀬 陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授) - おわりに