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2020年からはじまった社内イベント「LAC AI Day」、3年目の今年は「Cloud」をテーマに追加して、「LAC AI + Cloud Day」として開催しました。CTO、CIOをはじめとする総勢14名がAIとクラウド技術について発表した様子を、ダイジェストでお届けします。
CTO倉持から開会挨拶
CTO倉持からの開会の挨拶でイベントが始まりました。ラックは、2021年6月に発表した中期経営計画において、「デジ力」を成長戦略の柱に据えています。倉持からは、技術職だけでなく営業職やマネジメント層、コーポレート部門の社員も含むすべての社員が、新たに身に付けなければいけないものとして、「データを活用するスキル」「AIを事業に活かすスキル」を挙げました。ラックでは、AIの技術者を増やす取り組みの一つとして、一般社団法人日本ディープラーニング協会が主催する「JDLA Deep Learning for GENERAL(通称、G検定)」の受験を推奨しています。2022年度は、G検定の累計取得者数として200名を目標に設定しましたが、すでに11月の試験で200名を突破しました。
倉持は、「多くの社員が、G検定の学習を通じて基礎的な教養と共通言語を身に付けることができた。もちろん、表面的な知識があるだけでは十分ではなく、AIに関する知識を活用して身近な業務改善や、お客様への提案に入れていきたい」と話しました。
CIO喜多羅の基調講演
続いて、CIOの喜多羅から「Digital Transformation」というテーマの一時間の基調講演がありました。情報工学科の落ちこぼれだったという自身の学生時代、当時は第二次AIブームで、ハードやOSの世界よりも世の中の課題に近い研究をしたいと、プログラム自動合成の研究をしていたそうです。
その後、本日のCloudというテーマに絡めて、AWSのイベントに初めて参加したときに、クラウドを活用した数多くの新サービスの発表に衝撃を受けたことを語りました。
また、現代のようにイノベーションが数多く生まれる環境では、フロントラインに立つエンジニアは、時として正解のない課題に取り組み、答えを導いていかねばなりません。そのような状況での「Digital Transformation」は、事業の目的を見据えながら適切な解決策を導入する必要性があることを、事例を交えて話しました。
最後に喜多羅の個人的なエピソードが語られました。ある著名な方に会いたいと願っていた7年前、当時は会えずに残念な思いをしましたが、まったく関係ない趣味でつながった人を経由して、最近会えることになりました。それが新しい仕事にもつながっています。損得を考えずに、まずは色々な場所に顔を出して、人とつながることの大切さを語りました。
なお、基調講演以降の本編は、AIの部とCloudの二部構成となっています。
まずはAIの部、続いてCloudの部で発表された内容をご覧いただきます。
AIの部
社外のデータ分析コンペへの参加、業務での活用、社外との共同研究、趣味の話と幅広い内容となりました。
自然言語処理コンペへの参加
イノベーション開発グループの青野から、自然言語処理分野のデータ分析コンペに参加した話がありました。AIの分野には画像認識や強化学習などありますが、社内データは主にレポートやドキュメントなどのテキストデータが多いため、ビジネス面を考えた上で技術獲得を優先するべき分野と考えたようです。
データ分析コンペでは、腕試しをしたいデータサイエンティストらが、実データを用いて決められた課題を解き、予測精度を競います。上位者には賞金やメダルが贈られるようです。自身は銀メダルを獲得したので、どのようにして上位に食い込むことができたのか、試行錯誤の部分をAIの難しい話抜きに語りました。
青野は、データ分析コンペでは、AIモデルのパラメータをいくつかのパターンで試すことも重要ですが、自分(人間)がこの課題をこなすならデータのどういう部分を見てどう処理するかを考え、それに相応するようなAIモデルや入力データを考えることが重要であると語りました。
脆弱性やインシデントのサマリー要約
新卒一年目の芳村は、情報セキュリティにおける脆弱性やインシデントのデータベースであるCVE(Common Vulnerabilities and Exposures)の脆弱用件抽出と要約の話をしました。脆弱性情報の中で、システム管理者が必要な情報はほんの一部です。脆弱用件を抽出するシステム管理者の負担を減らしたいという思いが発表のきっかけでした。
AIによって要約をすることにより、多量の情報を人が確認する忍耐の必要な作業がなくなります。しかし、評価方法と精度向上という箇所に検討が必要ということがよく分かる例でした。
金融不正取引の合成データ生成
イノベーション開発グループの南は、「合成データ生成」について話しました。明治大学 高木友博研究室との共同研究の紹介です。合成データ生成とは、入力データをもとに、「精巧な偽物のデータ」を生成物として出力するタスクです。生成AIとしては、テキストから画像を生成する画像生成技術が流行していますが、それに類似した応用技術になります。
金融取引データの特性として、不正取引データはデータ全体の中でも非常に少ない不均衡なデータです。この研究では、「プライバシーの塊のようなデータを安全に受け渡す手法」「少ししかない不正取引データに合成したデータを水増しすることで、予測の精度を向上させる手法」への応用をテーマとして取り組んでいるとのことです。
今後の課題として、生成データをどのように評価すればいいのか、評価自体の難しさが残っているとのことでした。
汎用IoTのEDRをAIで実現する研究
デジタルペンテスト部の木田は、「汎用IoTのEDRをAIで実現する方法」に関する、2018年からの研究内容を発表しました。
最先端の研究内容よりも、時事的な情報に驚かされる発表でした。なんと、世の中のハードウェアには、不正な半導体が30%も入っているそうです。日本では多くありませんが、アメリカでは特に不正なハードウェアが見つかることが多く、軍事・航空業界にとっても大きな問題となっていると言います。しかし、プロセッサとして使われているOSが多岐にわたるIoT機器は、包括的な異常検知の仕組みが大変難しい状況です。それを解決する手段の一つともなり得る、最先端の取り組みを紹介しました。
機械学習手法LightGBMを使った競馬予想
ソリューション推進第二部の小林の発表は、機械学習手法LightGBMを使った競馬予想の話です。AIを試すには、毎週お題と結果が提供される競馬は良い素材だそうです。
Webサイトから予想に使うデータを収集しますが、HTMLデータを学習データに変換するところが大変とのこと。HTMLデータの中から必要なデータを取り出すスクリプトを作成するのは地道な作業で、年度が変わることでサイトのレイアウトやタグが変更されていることもあり、変更に合わせてデータ加工方法を変える必要があります。結果の回収率(「的中した金額÷馬券代に使った金額」×100)は、馬連(1着と2着の組み合わせ)は一般的に言われている平均回収率70%を下回り、ワイド(3着までに入る2頭の組合せ)では、平均回収率を上回る90%の成績だったそうです。
Cloudの部
さて、ここからはCloudの部です。ラックのクラウドビジネスの方向性、既存のビジネス紹介、クラウド運用の工夫、各種クラウドサービス、個人的なIoT×クラウド利用の話など、多岐にわたる発表をご紹介します。
クラウド推進部
Cloudパートのスタートは、クラウド推進部の八木下による10月に発足したばかりの部門紹介からです。インフラ部隊では、まだオンプレの案件比率が高い状況にあり、もっとクラウドビジネスを推進させるために発足しました。具体的な取り組み施策としては、要員育成、パートナー協業、発信活動、各種案件への技術支援といった活動を実施しています。
データレイク運用
西日本サービス部の小島は、データレイクについて話しました。データレイクは、XMLファイルやCSVファイルのような規則性のある構造化データと、文書データ、電子メール、画像ファイル、動画ファイルのような非構造化データを格納するリポジトリです。データレイクの運用では、利用しているAWSの各サービスの説明、構成についての説明がありました。各サービス間で連携はするものの、サービスごとの制約で苦しんでいることでした。
サービスの制約はどんどん変化していくので、こうした内容は継続して聞きたいものです。
ラックの自社サービス「FalconNest」
サイバー救急センターの永安は、ラックのサービス「FalconNest」のクラウド環境周りの発表をしました。「FalconNest」は、ラックが提供するサイバー攻撃の痕跡確認、マルウェア判定を支援する無料調査ツールです。2018年11月にサービス開始しているので4年経ちます。
ラックが提供する無料サービスなので、他の発表に比べてコスト面や運用面のシビアさがひしひしと伝わる内容でした。
新入社員向けのクラウド研修
プラットフォーム・サービス第二部 滝山からは、新入社員向けのクラウド研修の話がありました。
たった8営業日で「クラウドに興味を持つ、クラウドが好きになる」「達成感を感じられる」「新しく学ぶことが楽しい」を目的とした研修を行いました。昨年に続き、フルリモートでの開催です。AWS用語調査(グループ内発表)→AWSシステム構築→AWS理解度テストのプロセスで進行し、AWSクラウドについて新人が体感的に理解できるよう工夫された内容でした。
8日間の研修で学んだ内容は、新人たちの"未来の財産"として残るものにしたいという意図から、研修側で用意したAWS用語調査結果記載シートは、資格取得対策の際などの復習用の資料になる作りになっています。新入社員がうらやましくなるばかりでしたが、私たちも利用できる検証環境の案内があり、先輩社員にも嬉しい発表でした。
IoTをAWSサービスにつなげてみた
クラウド推進部の山田は、プライベートでのクラウド利用について発表しました。「置き配オートロック」問題に関する内容です。
当人が住むマンションはオートロックですが、宅配ボックスがありません。不在時に荷物が届いたときマンションの開錠ができず、置き配してもらえない問題を抱えていました。リモートインターフォンのシステムも出回っていますが、戸建て向きがほとんどです。そこでリモート開錠システムを考えたというIoT×AWSの事例です。電源が取得できない、インターホンを鳴らす人が必ずしも配達員とは限らないなど、問題を一つ一つ分解し安全に実装していく方法を聞くのは、とてもわくわくしました。
マルチクラウドセキュリティ
プラットフォーム・サービス第一部 小川からは、マルチクラウドセキュリティについて、Microsoft Defender for Cloudを使った話がありました。
マルチクラウドでは、それぞれのクラウドサービスを個別に管理する面倒さがあります。特に、セキュリティサービスメニューもクラウドサービスごとに異なっていて、クラウドサービスの中には、セキュリティサービス機能が不足しているものがあります。マルチクラウドを統合・一元管理がしたい、その一つとして、Microsoft Defender for Cloudを使った事例が紹介されていました。
今後クラウドの利用がますます増えるにつれ、より重要となってくるクラウドのセキュリティ対策について改めて考えさせられる発表でした。
最後の挨拶
最後に、ソリューション推進第二部の上原が、『「+One Power」で切り拓く次の時代』というイベントの背景にあるテーマ「プラスワン」についての話をしました。
「プラスワン」の標語は、従来のメニューにだけにとどまることなく新しいサービスを開発しよう、従来の技術に甘んじることなく新しい技術を導入していこうという意味です。皆がそれぞれ好きなこと、得意なことを伸ばしていく、「プラスワン」をするだけでも、将来への可能性が広がります。それを組み合わせることで、もっと新しいことができるようになります。
2020年のLAC AI Dayのテーマは「+One」、そして2021年はプラスワンで次に進む「+One Next」でした。そして、2022年は「+One Power」。一人、あるいはワンチームに技術や得意をプラスワンすると、n+1になります。同じようにプラスワンした他のチームとかけ合わせると(n+1)の2乗(POWER)の新たな領域ができます。ぜひ、プラスワンをして、次に新しい組み合わせを見つけましょう。
AIの発表も年々レベルが上がり、新たにクラウドの発表も始まりました。AIそしてクラウドが、ラックの次の武器になることを確信していると語り、イベントを締めました。
ラックの可能性を感じた「LAC AI + Cloud Day」
今回の「LAC AI + Cloud Day」は、仕事だけでなくプライベートな内容であっても、発表者の問題意識が先行している点が印象的でした。誰が使うサービスか、それが自分自身ということも含めて、使う人の顔が見えていました。そして課題を技術で解決する姿勢に、ラックらしさを感じました。最初にCIOの喜多羅が話した、最初に問いを立てる、誰のための仕組みかを考えることが重要であると、聴講し終えて改めて感じます。
最後に上原が話した通り、AIが次のラックの武器になることは間違いないでしょう。そして、CTOの倉持が話した通り、事例発表できる一部の社員だけでなく、社内にその土壌はできつつあります。新しい興味や関心のある分野を既存の技術と組み合わせ、他部署とも連携していくことで、新らたな出会いや可能性がどんどん膨らむ予感がするLAC AI + Cloud Dayでした。来年も楽しみです。
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