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AIで+Oneを目指す技術者を発掘する「LAC AI Day 2020」レポート

皆さんは普段、AI(人工知能)を使っていますか?

機械学習やディープラーニングといった、AI関連が話題になることが増えましたが、いまひとつピンとこないことありますよね。大学や研究部署といったアカデミックなエリアで活発だったAIの利用ですが、最近は業務での利用を視野に入れた段階に急成長しており、実業務に活用され始めています。

実はラックでもAIに関する取り組みが進んでいます。先日、AI技術を身近に感じ、この分野に深く没入したいエンジニアを発掘するイベント「LAC AI Day 2020」を開催しました。見どころが多くて書ききれないところもありますが、注目ポイントを中心にレポートします。

「LAC AI Day 2020」とは

「LAC AI Day 2020」は、オンラインで実施された社内向けのイベントです。ラックでのAIの取り組みを一堂に集めて情報共有し、一緒に取り組んでくれるエンジニアを発掘することを目的としています。イベント構成は挨拶を含めて8セッション、特別講演では明治大学の高木教授をお招きしました。運営の主体は金融事業部です。

ラック内で最もAIに関する取り組みが進んでいる、金融事業部の森山
ラック内で最もAIに関する取り組みが進んでいる、金融事業部の森山

金融事業部はFinTechが話題になった当初からAIの活用などを模索してきており、その間にお客様や研究組織との連携を強めてきました。そんな彼らのスローガンは「+One(プラスワン)」です。今の取り組みを一歩進めることを常に意識した事業活動を目指す点から、「LAC AI Day 2020」が生まれました。もともとは部内だけの情報共有だったのが、いつの間にか全社イベントになってしまったそうですよ。

特別講演では最先端AI×セキュリティの研究をご紹介

明治大学の高木研究室とラックは、セキュリティ対策技術の強化のためにAIの活用を模索する共同研究をしています。内容は、広範にわたるAI技術のなかでも最先端のアーキテクチャの活用を前提とした研究です。

大きく三つの分野に分かれており、それぞれ研究生が調査を行っています。

1. システムに含まれる脆弱性を、AIを用いて発見するファジング技術

遺伝的アルゴリズムを用いて、従来の攻撃文を遺伝子分解したのちに、文法を維持したまま攻撃内容のバリエーションを増加させて検証する手法。攻撃が成功したものをさらに進化させることで強化させる。

2. 攻撃コードの自動生成から、それに対抗する防御方法を発見する技術

スパム対策の強化にむけてスパムフィルタの検知パターンを増加させるためにAIの脆弱性を突いた敵対的学習(Adversarial Example)を採用。スパム検知の鍵となるワードの発見と、意図的なスペルミスの混入によりスパムフィルタを通過するパターンを発見し、スパムフィルタの精度向上に役立てる。さらに敵対的学習Adversarial Exampleの日本語ドメインへの適用にもチャレンジしている。

3. ディープラーニングを活用した敵対的生成ネットワーク(GAN)で未知の脅威を検知する技術

従来のアノマリー検知は、正常な状況を正規分布などの手法で傾向を分析し傾向から外れるものをアノマリーと判断するが、全く新しい攻撃には適用が難しい。また学習データのラベリングには人的コストがかかる。そのためサイバー攻撃の生成器と真贋判定器を開発し、GANによる教師なしディープラーニングの適用に取り組む。

高木教授と研究室の学生から、サイバー攻撃の傾向調査からAIを用いた解決策のアプローチの手法を説明いただきました。大変密度の濃い内容で、今後の研究も楽しみです。

明治大学の高木友博教授。YouTubeでもAIに関する動画を多く配信しています。
明治大学の高木友博教授。YouTubeでもAIに関する動画を多く配信しています。

データサイエンスコンペの意義

続いて、ラックが誇るAIのスペシャリストたちの講演です。皆さんはProbSpaceと呼ばれる、データ分析手法を競い合うコンペを知っていますか?ProbSpaceとは、データの分析に課題を持つ企業が、世界中のデータ分析を得意とするエンジニアにコンペ形式で課題を出し、賞金も提供するといったニーズマッチングを提供するプラットフォームです。

金融事業部の與五澤よごさわと青野は、 AIに対するスキルアップやモチベーション維持のためこのコンペに参加しました。今回のコンペは、6万5千ほどの対戦成績を示す訓練データから法則を導き出し、2万程度のテストデータを分析し正答率を評価させるというものです。

2人はこの挑戦で300名ほどの参加者の中60位の成績となりました。うーん、ちょっと悔しい。成績上位者はシンプルな分析をしていた傾向が高く、私たちはAIに複雑な分析をさせすぎていました......。また、見逃してしまった特異点の存在も採点の肝だったようです。

コンペ参加で重要なことは、成績上位者との差を後から振り返ることです。敗因が分かることで次のコンペへの意識も高まり、データの分析方法のバリエーションを広げるなど継続的なスキルアップにつながっていきます。次回はさらに上を目指していきたいです!

AIコンペはAI人材の学び場

ラックの研究チームであるCGJ(Cyber Grid Japan)に所属する庄司もまたAIコンペに積極的に参加しています。彼は多くのコンペに参加する中で、コンペの意義は競争ではなく切磋琢磨する仲間作りだと感じました。

もともとシステムインフラのエンジニアだった庄司は、次のフィールドをAIに定めました。大学でコンピュータグラフィックスを専攻してきたことからAIによる画像分析を調査しましたが、時系列の概念などAIの新しい要素が膨大で驚いたようです。

AIの勉強が一段落したところで、CDLEハッカソン2020のAIコンペに参加しました。過去4日の雲の画像をもとに次の24時間の雲の動きをAIに予想させるというものです。しかし、データ量が限られていることから分析に必要な情報が足りず、過学習が発生してしまう難しさを講演で説明しました。

なお、このコンペについては「LAC WATCH」や、「ラック・セキュリティごった煮ブログ」で詳細をご紹介していますので、ぜひご覧ください。

最後に、庄司はAIコンペに参加するメリットは大きく三つあるとお話ししました。一つ目はAIの学びを促す優良なデータが提供されることです。 AIの分析をするよりも、分析するデータを準備する方がずっと大変なんです。二つ目は、難題にチャレンジできる点です。実業務ではなかなか体験できない、力試しができる問題と出会えます。三つ目は、参加者は仲間なのだという意識が生まれることです。

コンペといっても参加者同士でアイデアを交換してもよく、仲間意識が強くなり孤独感が軽減します。コンペに参加してみようか悩んでいる方がいましたら、思い切って参加されることをお勧めします。

IBM Data&AIは、実際どこでどのように使われているのか

さらに詳しく知るにはこちら

IBMソリューション関連製品

次は製品紹介の講演か?と思いきや、そうではありません。ラックが取り扱っている、データ活用(つなぐ、ためる、データ活用AIアプリ連携)全ての領域でIBMが提供するソリューションが、いったいどこでどんなふうに使われてビジネスになるのかをお話ししました。

SI事業において各事業部の連携を担当する、SIS事業統括部の八木
SI事業において各事業部の連携を担当する、SIS事業統括部の八木

IBMは、ITを支えるインフラを提供していますが、 AIなどデータ分析もプラットフォーム化を進めており、顧客対応、経営、金融、製造/CPG、その他とあらゆる領域へ適用が可能なソリューションに成長してきました。

さらに詳しく知るにはこちら

IBMソリューション関連製品

昨今では、事業にダイレクトに役に立つ、次のような営業管理で活用が進んでいます。

  • 既存顧客の分析により新しい顧客へのアプローチ
  • 顧客の活用状況を分析し離反を抑制
  • 顧客の購買状況を分析し新しい営業機会を創出

また、ごく身近なAIを使ったソリューション事例としてチャットボットがあります。社内のポータルなどで、自分が探したい情報がどこにあるのか分からないこと、よくあります。テレワークで人づてに聞きにくいときなど、チャットボットは便利ですね。もちろん、カスタマーサポートとしても24時間365日で対応可能な点が有効です。コンタクトセンターの品質向上、効率アップなどの課題解決にAIを上手く活用している事例などをご紹介しました。

言語AIを使ったデイジーチェーンサーチ

「ある物質と別の物質の相互作用を阻害する物質について書かれている論文を探し出したい」というお客様のニーズがあります。しかし、単純に検索機能を使った検索では、求めている答えを的確に探し出すことが難解です。

エンタープライズ事業で新規事業に取り組む清水のお客様の業種において、世界中で共有されている論文は実に約3千万編あります。毎年50万編が新たに生まれるなかで、一般的な語句で検索をしても莫大な検索結果が返ってきてしまうという課題を抱えているのです。

そこで清水は、「デイジーチェーンサーチ」という手法を検討しました。まずはお客様が求める内容を含んだ論文をデータで提供してもらい、自然言語処理を施して文脈解析を行います。解析したドキュメントに近いドキュメントを芋づる式に発見してゆくという手法です。膨大な数の論文から満遍なく探すのではなく、正解を基に近いデータを探す発想の転換を、現実の技術として成り立たせたのはAIの技術によるものでした。

なお、「デイジーチェーンサーチ」の詳細はLAC WATCHで公開されていますので、ご覧いただけると幸いです。

Elastic SearchによるAI分析

コロナ禍でITの活用環境は大きく変化しました。働き方がオフィス勤務からリモートワークへ、ITシステムは集中管理でオンプレのレガシーから分散管理でクラウドのモダン化へ、セキュリティ対策は境界防御からゼロトラストへといった変化に対して、データの管理と運用の観点での対策についてお話ししました。講師は金融事業部で新規事業を推進しているザナシルです。

さらに詳しく知るにはこちら

Elastic Stack(エラスティック スタック)

お客様を取り巻くIT環境が変化し、幅広い範囲でニーズをカバーできるサービスが「Elastic Stack」です。Elastic社のElastic Stackと呼ばれるソリューション群は、横断検索ができるSearch、システムの統合検索・分析・可視化をするObservability、セキュリティ機器のイベントを一元管理するSecurityがあります。これらそれぞれのソリューションを、一つのプラットフォームで提供できる点がElastic Stackの特長です。

さらに詳しく知るにはこちら

Elastic Stack
(エラスティック スタック)

今回の講演では、Elastic Stackの中でもElasticsearchのデモをご覧いただきました。Elasticsearchは、あらゆるデータフォームやデータフォーマットを取り込み、分析を行うことができます。この分析エンジンには機械学習機能があり、データを取り込むだけでイベントの根本原因の分析や相関分析を行え、結果を分かりやすくディスプレイするといったことを実現できます。

さいごに

ラックでのAIの取り組みは、視聴率解析や携帯電話の移動情報を使ったシステム基盤の構築などから始まり、現在は「LAC AI Day 2020」でお話ししたような研究案件や実証実験をしながら概念を作っていくようなものに至っています。

最高技術責任者の倉持はイベントを振り返り、いよいよ実用段階になったAIの技術共有をエンジニアによるボトムアップで進められている点が重要と強調しました。モデルの世界からリアルの世界に切り替えてゆくのは、いつだってエンジニアの役割であり、草の根的に個の技術が浸透する事により強い土壌が醸成されることを期待しての言葉です。

ラックのAIへの取り組みは今後ますます広がります。もし自社の問題解決にAIを活用できないかとお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

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