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地域社会の課題解決にITがどう貢献できるか考えよう、というイベントが10月下旬に宮城県石巻市でありました。
私はこのイベント「CITPシンポジウム in 石巻」にオープンデータを利用したサンプルプログラムの製作や、当日のワークショップのファシリテーターとして関わりましたので、イベント開催の経緯や当日の様子をご紹介します。
震災被災地にIT上級技術者が集まるまで
CITPとは、情報処理学会が2014年に新設した「認定情報技術者(CITP)制度」で認定されるITスキル標準(ITSS)レベル4以上の上級技術者をいいます。認定者は2017年10月現在、約7,500名にのぼります。
CITP制度の大きな特徴として、認定者によるコミュニティの形成を推進している点が挙げられます。目的はCITP認定者同士の交流を通じてそれぞれが研さんを積むとともに、情報分野における人材育成や、地域活動などの社会貢献を行うことです。
ラックからは私を含め2名がコミュニティの幹事として参加しています。
コミュニティ内で2016年に発足した「社会価値創造分科会」では、東日本大震災の復興支援をテーマとして、自分たちに何ができるかを検討してきました。その過程では、石巻専修大学山崎泰央経営学部教授ゼミ主催の復興支援ワークショップに参加し、現地調査を実施したりしました。こういった経緯から、CITPとして今回初めて開催するシンポジウムを石巻市で開くことになりました。シンポジウムの目玉は「シビックテック」の手法を使ったワークショップです。
シビックテックとは?
近年、ITを利用して市民自ら地域課題の解決や地域の振興を目指す「シビックテック」という取り組みが広がっています。
元々はアメリカで始まったもので、日本では、石川県能登地方の「のとノットアローン」(子育て応援ウェブアプリ)、同県金沢市の「5374.jp」(ゴミの捨て方がわかるアプリ)、福井県鯖江市の「消火栓情報」(消火栓の位置がわかるアプリ)などが有名です。
こうした取り組みが国内で広がりつつある背景には、スマートフォンの普及に代表されるITの進歩や、国レベルでのオープンデータ利活用促進の動き、一般市民の社会貢献活動への関心の高まりなどがあります。
このシビックテックに関する新聞記事を見つけたメンバーから、「石巻でシビックテックをやってみよう!」という提案があり、有志数名でシビックテック専門部会を発足、シンポジウムに向けて次のような方針で準備を進めました。
- 石巻市が公開している200種類超のオープンデータを利用してサンプルアプリを作る
- サンプルアプリを参考に、どんなアプリが地域の課題解決に役立つかを石巻の人たちと検討する
サンプルとして作成したアプリは、「宮城県石巻市 公共施設の位置情報」「宮城県石巻市 放課後児童クラブの状況」のデータを使用して、放課後児童クラブの設置場所を地図上に表示するものです。Javascriptで作成しています。シンポジウムではサンプルアプリを使ったデモも実施しました。今のところ一般には公開していませんが、さらに完成度を高めて年度内の公開を目指しています。
CITP石巻シンポジウム当日
さて、シンポジウム当日です。会場の石巻専修大学には、CITP認定者、学生を始め、30人以上の参加者が集まりました。
基調講演に続いて、いよいよシビックテック ワークショップの始まりです。
まずは、石巻市が公開しているオープンデータの一覧からどういうアプリがつくれそうかを参加者一人一人が考えます。ここではあえて、データの詳細な内容や項目などは提示せず、タイトルから想像して、どのデータとどのデータを組み合わせるとよいか考えてもらいます。
その後、各参加者個が考えたアイデアを持ち寄り、グループ単位で実現したら面白いと思われるアプリ案をまとめて発表してもらいました。
しかし、初対面同士のためなかなか話が弾みません。参加者がそれぞれ考えたことを順に発表すると一周で話が終わってしまいます。学生が考えたことを汲み取ってあげたいものの、方向性がバラバラでまとめられない、時間がなくなっていく、焦る・・・ファシリテーターとしての自身の未熟さを痛感しました。
そこで「課題解決」という原点に立ち返り、今石巻市で暮らして困っていること、改善してほしいことを挙げてもらいました。そうすると、「学校の周りに何もない」「石巻市外から石巻専修大学に入学したが、どの地域が学生にとって生活しやすいのかがわからない」などの意見が次々に出され、それを聞いた石巻市ICT総合推進室の方からの助言もあり、「石巻専修大学生便利マップ」案で進めることになりました。ひとたび方向性が決まると「こういうデータがあるともっと良い」「こういう機能もほしい」などと、盛り上がりました。
結果、私たちのグループは、「学生生活便利になるで賞」を受賞しました!
シンポジウムを振り返って
初めてのシンポジウム開催で慣れないことばかりでしたが、終了後のアンケートでは「有用だった」が8割を超え、「市民による考えというのが良かった」「地域貢献の考え方が理解できた」「次回があればまた参加したい」との感想が多く寄せられ、やって良かったと感じました。
今回のシビックテック ワークショップでは、参加者からより多くのアイデアを引き出せるよう、慶応義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科研究生、江幡彩様から提供を受けたツール「アイデア創出フレームワーク」を活用しました。
今後は、今回の手法をより広く使えるような内容に進化させるべく、江幡様と協力してツールのブラッシュアップや、CITPならではのアイデアの整理方法の検討を進め、いろいろな地域での横展開を目指して活動していきたいと考えています。
最後に
今回の活動内容は2018年2月2日(金)に東京都内で開催される「ソフトウェアジャパン2018※」のCITPフォーラムで報告します、入場無料ですので、シビックテックの手法に興味がある方はぜひお越しください。
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