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皆さんは、デジタルツインという言葉を聞いたことがありますか?
近年IoTやAIの普及で注目されるようになったデジタルツインは、日本政府が科学技術・イノベーション基本法に基づいて実現を目指している未来像「Society 5.0」の中核になる技術とされており、現実世界の環境を仮想空間に再現し、現実世界では困難なシミュレーションや短期でのモデリングを行えます。
本記事では、デジタルツインのメリットや活用事例をご紹介していきます。
デジタルツインとは
デジタルツインとは、現実(リアル)空間で得たモノ・データ・プロセスを、仮想(サイバー)空間上で再現する技術です。これまでの仮想空間と異なるのは、よりリアルな空間をリアルタイムに再現できる点です。
例えば、現実空間でセンサーデバイスといったIoT技術を駆使して得た膨大なデータ・情報から、仮想空間上に現実の世界を再現し、対象の状態や挙動をリアルタイムに反映し、現実世界で起こる変化や将来の予測をシミュレーションできます。
デジタルツインのメリット
デジタルツインのメリットは、対象となるモノの予防保全、設計・開発の効率化や品質向上、試作・検証の期間短縮とコスト削減があげられます。
予防保全
従来、製造ラインや製品に問題が発生した際は、現場作業員や顧客からのフィードバックが必要でした。しかし製造機器にセンサーを付けて常時監視し稼働状況を同時進行で把握することで、トラブルが発生した際の原因特定が容易になります。
また、過去の稼働データから障害の予測が可能となり、予防保全を実践できるメリットがあります。
品質向上
実際のデータを収集・解析し、可視化しながら試作・検証を行うことで、製品や環境の問題点を特定しやすくなります。
特に現実世界では限界がある試作や試験は、仮想空間では繰り返し行うことが可能で、品質向上に貢献します。
期間短縮とコスト削減
従来の試作は実際のモノを作って検証することの繰り返しにより、大きな労力と時間が必要でした。仮想空間では実際にモノや環境を作る必要はなくなり、試作品の作成にかかる費用や検証時間の短縮が期待されます。
現実世界では困難な予測が可能
現実世界の環境を再現して災害を検証することは非常に困難ですが、デジタルツインでは仮想空間上に環境を再現し、災害をおこして検証することが可能です。これにより精度の高い被害想定や災害対策への活用が可能です。
デジタルツインの活用事例
製造業
デジタルツインを早くから活用してきた業界が製造業です。製造機器、製造工程を仮想空間に再現することで、実際に製造する前に無駄な部分を洗い出せます。
また生産をシミュレーションすることで、完成した製品(モデル)の品質を確認することや機器の問題を未然に防げます。
建設業
実際の都市や建物のデータを収集して仮想空間上に再現し、人流や物流などの動的な要素を加えることで、より人が暮らしやすい都市開発が可能になると考えられています。
他にも、建物の施工にあたり現実の施工環境と同じような状態を作ることで、施工の進行を予測しやすくなりより円滑に管理できるようになります。
医療・ヘルスケア
人の身体や病気の状態をデジタル化して、シミュレーションや分析を行うことで、より効果的で安全な治療法の提案が可能になることが期待されています。
医師は、患者に最適な治療法や薬物投与量を決定したり、手術のシミュレーションを行ったり、副作用や合併症のリスクを予測することができるようになります。
災害対応
防災への活用として、内閣府が進めているCPS4D(災害版サイバー・フィジカルシステム)があります。
仮想空間上に現実の地形、変わり続ける自然や社会の状況と同じ状態を再現します。水害が発生した際に、時間の経過による水位の変化から浸水想定地域を特定することができます。
デジタルツインを始めてみる
デジタルツインを始めようとしたときに、従来は専用のソフトウェアが必要でしたが、昨今はクラウドベンダーからもデジタルツインのサービスがリリースされています。
Microsoft Azureでは、「Azure Digital Twins」、AWSでは「AWS IoT TwinMaker」、OCIでは「Oracle Cloud SCM」があり、専用のソフトウェアがなくても、モデルとデータがあれば誰でもデジタルツインを使用することができるようになりました。
デジタルツインがどんなものか、どんなことができそうかの確認を、クラウドサービスを使って始めるという選択肢もあります。
デジタルツインで何をするかがポイント
デジタルツインで実現したいことを明確にする
最初にすることは、デジタルツインを使用して実現したいことの明確化、すなわち目的の策定がポイントになります。これはチームレベルの小さいものから事業レベルの大きなものまで考えられます。規模に応じてコンセプトやビジョン、ロードマップを策定します。
検証を実施する
初期の条件、仮定の元で検証を実施します。このとき検証に必要なセンサーの整備とデータの収集も行います。ここで得た実績を蓄積して、できること、できないことを整理し、目的の達成度合いの確認や達成するための具体的な要件に繋げていく方法もあります。
大切なのは小さな仮説、小さな検証を繰り返し行い、目的に近づけることです。
コンサルティングを活用する
デジタルツインを活用するには専門の知識が必要になります。目的が明確になったところで、自社での推進が困難な場合には、コンサルティングを活用します。
コンサルティングを利用して課題や目標を明確にして適切なソリューションを選択することで、デジタルツインの効果を最大化し、ビジネスの競争力を高めることができます。
基盤、ソフトウェアを整備、実装する
検証により実現の目途がたってきたら、デジタルツインを構成するために必要な基盤とソフトウェアを選択し実装します。
また実際のデータやセンサーの整備を行い、現実空間との同期を行います。実装と現実空間のデータの同期ができたら、デジタルツインを活用し、分析や業務改善を行います。
おわりに
IoTやAIなどの技術進展によって実現したデジタルツインは、製造業や都市開発、医療、災害対策と幅広い分野で活用が拡大していくと期待されています。分析やシミュレーションによる効率的なモノ作りから都市レベルの課題解決まで、デジタルツインはスケール感も幅広く、自社の課題に有効な解決手段となる可能性があります。
ラックは情報セキュリティやインフラの適切な実装、運用の実績があります。デジタルツインを使用する上で注意すべきことの検討や、目標の明確化、活用に向けてお客様と共に伴走していきます。
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