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導入事例 | 

ディップ株式会社様 生成AI活用支援サービス事例

生成AIで若手育成の課題を解決し、さらなる価値の創造を目指す

日本最大級のアルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」や、総合求人サイト「はたらこねっと」を運営し、人と企業をつなぐビジネスを推進するディップ株式会社。同社は、人手不足や業務効率に課題を抱える業界・業種の定型業務を自動化するDXサービス「コボット」シリーズを展開しており、自社の社員のスキルアップには生成AIを活用している。これらの取り組みをリードしている、CIO(最高情報責任者)の鈴木 孝知氏と、メディア事業本部 ナレッジイノベーション課の増田 由利子氏に話を聞いた。

ディップ株式会社 CIO 鈴木 孝知氏
CIO(最高情報責任者)
鈴木 孝知氏
ディップ株式会社 メディア事業本部 事業推進統括部 業務企画部 ナレッジイノベーション課 課長 増田 由利子氏
メディア事業本部
事業推進統括部 業務企画部
ナレッジイノベーション課 課長
増田 由利子氏

革新的サービスの提供と価値創造

ディップ株式会社(以下、ディップ)は、1997年に名古屋で創業した。事業が円滑に動き出したのは、派遣会社のお仕事情報提供サービス「はたらこねっと」の提供開始からだ。その後、同社躍進の口火となったのが、アルバイトの求人情報を扱う「バイトル」だ。バイトルは、求人情報が紙媒体中心だった時代に、インターネット、その後普及し始めた携帯電話で求人を探すことを常識化した革新的なサービスだった。

「人が全て、人が財産」を信念とするディップは、経営の最重要テーマとして人材育成を挙げている。例年多くの新卒社員を採用しており、2023年に過去最多となる612名を迎え入れた。こうした若い力が早期に価値創造プロセスに貢献することが求められている。

ディップの価値創造プロセスとは、「サービス開発力」、「プロモーション力」、「営業力」で表される。新入社員の9割は営業として配属され、同社サービスの顧客開拓に取り組むことになるため、事業の成長を支える営業力強化に力を入れている。

ディップの価値創造プロセス

ベテラン社員に依存する営業力強化策の課題

ディップは、労働力を必要とする企業と仕事を求める労働者を引き合わせるサービスを提供している。事業の源泉は、求人情報を寄せる企業からの掲載料だ。このサービス展開を強力に推進しているのが「営業」なのだ。現在2,000名を超える営業担当は、求人広告の販売だけでなく、採用成功のノウハウ提供や、採用した人材の定着と活躍にまで取り組むなど、採用コンサルタントとしての側面も持っている。そのため、事業に対する幅広い知見と経験が必要だ。

営業担当は大きく分けて、若手社員、中堅社員、ベテラン社員に分類できる。これまで若手社員の育成には、ベテラン社員が多くの時間を割いていた。商材の教育や営業スキルの伝授を通して、自律できる中堅社員への早期育成に取り組んできた。しかし、ベテラン社員はハイパフォーマー集団であり、育成への取り組みは営業結果に少なくない影響が出る。将来の営業能力向上と、現時点の営業成果の確保の両立が同社の課題だった。

若手営業育成にAIを活用

この課題に対してディップは、生成AIで仮想の顧客を生み出し、若手社員のバディーとする取り組みを始めた。以前よりAIの活用に積極的な同社は、Azure OpenAIを基盤とする実行環境を整備し、業務効率向上や、事業における新しい価値の創造にAIを活用し、多面的に取り組んでいる。

生成AIを使った若手営業の育成では、AIにより創りだされた仮想の顧客を相手にロールプレイを行い、顧客対応の経験を積むことにフォーカスを当てた。当初、ディップの最優秀営業メンバーの監修によるAIのモデリングを考えたが、余りにレベルの高い社員をモデリングしても経験の少ない若手社員にとって参考になりにくいと考え、複数の中堅社員の協力を得てモデルの作成を進めた。

AIによる仮想顧客の実現

AIを使ったロールプレイシステムの開発は、株式会社ラック(以下、ラック)のAI開発チームの支援を受けて進められた。まずは、ディップの中堅社員が持つ顧客対応のノウハウや、想定される顧客の特性を整理し、ロールプレイ対象の顧客像を明確化した。

次に、ディップの営業戦略を踏まえて、営業活動の目的やロールプレイ内容の評価ポイントを整理した。これは、ロールプレイ完了後にAIが適切な営業活動を評価するために必要だった。加えて、よくある顧客の反応をプロンプトに設定することでリアリティを追求した。

営業ロールプレイのサンプル画面
営業ロールプレイのサンプル画面

開発にあたり苦労した点としては、AIの反応を検証する作業が膨大であったことだ。検証とチューニングを繰り返すことで、徐々に満足のいく受け答えができるようになった。また、40を超える業種ごとに必要な知識は、まだ十分にカバーしきれていないという。鈴木氏は、「例えば、ホテル業界のお客様から必ず質問される項目があります。こういった営業のノウハウをAIに理解させ、より実践的なロールプレイができるようにしたいと考えています。」と述べた。

ディップ株式会社 鈴木 孝知氏

なお、開発を支援したラックに対して増田氏は、「ディップの課題やアイデアが整理されていない状態でも的確に言語化し、大変スピーディーに次の行動に移せました。提案やプロトタイプの開発もスピーディーで、この短納期で実現できたのは驚くべきことでした。」と振り返った。

ディップ株式会社 増田 由利子氏

AI活用のこれから

このようにAIの活用を進めているディップは、5月に「dip AIエージェント」をリリースしている。具体的には、求職者をケアする対応をAIが行い、よりきめ細かいサービスを目指すとしている。

人材紹介における正社員の採用はエージェント費用として企業から得られる対価は大きい。しかし、アルバイトが中心の人材紹介については相対的に対価が低くなる。企業として実利を求めるのであれば、利益の薄いアルバイトの人材紹介事業は敬遠するかもしれない。しかし、ディップの信念である「人が全て、人が財産」は、すべての就業者に向けられている。

増田氏は「社長の冨田は、アルバイトを必要とする店舗の方や、正規雇用ではなくても働きたい方を支えるのが当社だ、という思いが強いのです。しかし、事業的に採算を考えなければならないという、相反する問題に対してAIを活用した解決を図りたいと考えています。」と語る。

アイデア集団であるディップは、求人原稿を自動生成するAIアドバイザーなど、さらなるAIの活用領域を広げているが、すべてはシステムを利用する企業と求職者の、課題解決に真摯に向き合った結果だ。これからも一億総活躍社会の実現に向けてディップの奮闘は続くだろう。

写真左からディップ株式会社 増田 由利子氏、鈴木 孝知氏

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