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高専生が思い描く農業のミライとは? "すごうで"を足掛かりに羽ばたく17歳、原田そらさん

ラックが社会貢献事業として実施する"すごうで"の2020年度採択プロジェクトがこの4月より始動する。"すごうで"は、2013年から始まったラックの人材育成事業のひとつで、「若者がITで描く夢の実現を支援する」ことをテーマとしている。

2020年度に採択されたのは、

「手のひらから、はじまる農業。もっと楽しく、面白く!
市民農園支援プラットフォーム『GamifyAgri(ゲーミファイアグリ)』の開発」

千葉県在住の高専生、原田そらさん(17歳)提案のプロジェクトだ。

提案者の原田そらさん
提案者の原田そらさん

この計画では、農業をこれまでとは違う視点から捉えたITプラットフォームづくりを行うことを目標とし、農業をもっと楽しく、面白いコンテンツにしていくという。
選考にあたった審査委員全員が深くうなずいた、17歳の若者が描いた夢、実現したい計画とはいったいどのようなものだろうか?

「手のひらから、はじまる農業」とは?

耕作放棄地といった言葉を聞いたことがあるだろうか?近年、高齢化や後継者不足で農業人口が減り、その結果、耕作放棄地が増加している。世の中では作物の栽培への関心は徐々に高まりつつあるものの、職業として農業を選択することには躊躇する人が多い。

原田さんの提案は、関心のある人と農業、農地を結びつけるためのアイデアとして、趣味としての農業を提案し、農業への間口を広げていこうというものだ。そして、農地と人とを結びつけるツールとしてスマホアプリを活用し、普段から関わりのない人でも情報に触れ、参加しやすいプラットフォームを提供する。
「週末のピクニック」や「町おこしのイベント」など人の集まる仕掛けと、地域のファンとなるコミュニティを形作っていく計画だ。

GamifyAgriプラットフォームのスマホイメージ
GamifyAgriプラットフォームのスマホイメージ

原田さんによると、GamifyAgriの名称は、Gamification(ゲーム化)とAgriculture(農業)の造語であり、市民農園にゲーム要素(経験値の積み上げによるレベルアップやコミュニティなど)を取り入れることで、市民の参加へのハードルを下げ、農業の魅力に気付いてもらえるアプリにしたいという思いが込められているという。最終的には、地域への訪問者を増やすことで、経済活性化や移住、就農のきっかけ作りになったらという目標を持っているということだ。

農業への関心が広がっていくステップのイメージ
農業への関心が広がっていくステップのイメージ

地域の役に立ちたいという思い

原田さんは、2003年、自然豊かな南房総で生まれた。父親が地元の館山で町おこしの団体に参加していることから、地域の課題を解決しようと努力する人達の姿を、幼いころから見て育った。特に2019年は台風15号により千葉県は大きな被害を受け、被災した家屋をさらに台風19号が襲う、災害の多い年だった。原田さんは復興のボランティアに参加する中で、被災地の現状だけでなく、少子高齢化、過疎化などのさまざまな地域課題について考えるようになったという。

その時、目にしたのがこの"すごうで"2020年度の募集だった。
このプログラムの支援を受ければ、災害からの復興だけでなく、自分の住む地域の社会課題の解決に取り組むチャンスが得られるのではないか?
そう考え、学業の傍ら、今回の計画をまとめ上げたということだ。

実現に向けての課題はどう考える?

実体験に基づく社会課題へのアプローチ、これまでに無かった切り口で、地域の農業者と世の中の人々を結びつけるアイデア。彼の提案は当事者ならではの地に足の着いたしっかりとしたものだった。しかし、実際の農地の運営となると単なるITソリューションだけでは解決できないこともある。

袖ヶ浦市に広がる田畑(久留里線沿線)
袖ヶ浦市に広がる田畑(久留里線沿線)

「例えば地方の耕作放棄地をコミュニティの場に選んだとして、参加者はそこまで足を運べるのだろうか?都心の農地や、コミュニティーメンバーが地方にいる場合は良いが、一度も現地へ行けないという問題も考えられる。コミュニティを支える現地農業従事者の確保・育成がポイントなのではないか?」

審査員からは、そのようなシビアな質問の投げかけもあった。その問いにも原田さんはこう答えている。

「現地に何度も足を運んでくれる人、もしくは現地での協力者の必要性があることは事実で、おそらく軌道に乗るまではそうした取り組みが必要かと思います。
そこにSNS機能を備えたプラットフォームがあれば、複数の参加者が軸となって共同で農地の手入れ、維持が行える状態にできると考えます。例えば、1つの農地を共有し、月1回の参加ができる人が4人いれば、毎週1回は手入れができる。連絡のために交流できる機能(共有カレンダー、グループチャットなど)を設け、交流イベントを企画するなど、参加者が自発的にコミュニケーションできるようにしていきたいと思います。」

スケジュール調整やチャットの画面イメージ(スマホ)
スケジュール調整やチャットの画面イメージ(スマホ)

ラックが提供する事業化へのサポート

2020年3月末、ラックから原田さんのもとへプロジェクトのサポートを担うスタッフが訪問した。4月からのプロジェクト進行の具体的な内容と課題を詰めるためだ。

支援予算は100万円。開発のための機材やツールの支援、サーバーなどのインフラについてはその中から拠出される。しかし、このビジネスモデルを事業化していくには、事業コンセプトを想定した利用者層に対してヒアリング、テストしていくプロトタイピングのプロセスが不可欠だ。
そして、農地を提供してくれる農家や地主の方との交渉、農地運営や栽培の技術的指導が得られることも重要だ。これらの地域の人たちとの交渉にも、バックアップ企業としてのラックの存在は大きな意味を持つ。交渉や契約など重要な局面には、原田さんの傍らでサポートを提供することを双方で確認しあった。

新しい地場産業のスタートを目指して

千葉県ではいちご狩り、ブルーベリー農園、ぶどう、梨などの観光農業は、地場産業として成り立ってきている。そこに観光から継続的な農業体験が行える機会が加わり、広く知られるようになると、リピーター層が形成されていく。

新規参入を増やすサイクルのイメージ図
新規参入を増やすサイクルのイメージ図

とはいえ、1年という支援期間では、プロトタイピングと事業協力体制の構築までしか到達できないだろう。そして事業として独り立ちするまでには、様々なハードルが待ち受けているに違いない。しかし、ラックの"すごうで"では、支援期間終了後も、原田さんのような志を抱く才能ある若者のメンターとなり、社会の課題解決に一緒に取り組んでいく考えだ。

このプロジェクトでは、本年度中に農場の試験運用への参加者を募集する計画だ。プロジェクトの経過報告と合わせて、広くお知らせしていく予定だ。ぜひ関心のある皆さんの参加をお願いしたい。
また、千葉に限らずITによる地域の農業振興に関心ある方がいれば、ぜひお問い合わせ頂きたい。

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