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導入事例 | 

東京都済生会中央病院様 統合人事システム「COMPANY®」向け中継サーバー、インターフェース開発事例

医療従事者の勤務の実態を把握し、地域の中核病院の健全運営に取り組む

社会福祉法人恩賜財団「済生会」は、明治天皇の済生勅語に基づいて創立され、110年以上にわたり「分け隔てなくあらゆる人々に医療・福祉の手を差しのべる」という済生の精神を貫いてきた。東京都済生会中央病院(以下、済生会中央病院)もその理念のもと、地域の中核病院として110年を超える医療活動を続けている。

しかし、医療従事者の働き方は大きく変化し、命と向き合う過酷な現場では負担の軽減が急務となっていた。そこで、職員の勤務実態を可視化し、職場環境の改善につなげるため、統合人事システム「COMPANY®」の導入に取り組んだ。これらの取り組みの背景と狙いについて、プロジェクトをリードする橘川氏、髙橋氏、石田氏に話を聞いた。

事務長 橘川 健二氏
事務長
橘川 健二氏
次長 髙橋 浩史氏
次長
髙橋 浩史氏
人事課 課長 石田 典恭氏
人事課 課長
石田 典恭氏

医療施設の直面する課題

日本の医療環境は、1961年に導入された国民皆保険制度によって大きく変わった。国民全員が公的医療のもとで医療を受けられるようになり、死亡率の低下とともに平均寿命は世界最高水準へと伸びた。現在、全国の医療施設は18万に迫り、高齢化社会を背景に増加が続いている。しかし、病床が20床以上のいわゆる「病院」は8千施設にまで減少しており、その背景には医療従事者の不足や人件費の高騰、経営コストの増大といった課題がある。新型コロナウイルスによる影響で、院内感染を懸念した患者の受診控えや、対応患者数の抑制などが病院の経営を圧迫し、医療現場は厳しい状況といわれている。

さらに、医師の長時間労働は深刻な問題だ。人手不足のなか、医療の最前線を支える医師たちは過酷な労働環境に置かれている。こうした環境を改善するため、2024年4月より「医師の働き方改革」が施行され、医療施設は勤務医の健康のために時間外労働の上限規制や、連続勤務時間の制限など、労働時間管理が必要となった。

地域の医療を担う中核病院、済生会中央病院

済生会中央病院は、病床数523床、職員数1,300名を擁する地域の中核病院として、日々地域住民の医療に向き合っている。そのルーツは、明治天皇の済生勅語に基づいて創立された恩賜財団済生会の基幹病院として開設された「恩賜財団済生会芝病院(初代院長北里柴三郎)」にさかのぼる。

同病院の医療施設としての役割は多岐にわたる。高度医療の集積病院、救急治療の提供、災害拠点病院として、まさに地域の中核として機能している。また、全国に展開する済生会の83の病院と連携し、相互に支援し合うネットワークも構築されている。例えば、地震のように大規模な災害があった際には、別ブロックから医師や看護師を派遣するなど、日本全体で住民を支える体制ができ上がっているのだ。

済生会中央病院の事務長を務める橘川氏は、病院設立の背景について次のように語る。「当時は日露戦争の影響もあり、医療にかかれない住民が多かったと聞きます。この状況を憂いた明治天皇が、国民を医療で救済する済生の精神(分け隔てなくあらゆる人々に医療・福祉の手を差しのべること)を説かれ、皇室から資金を賜り、恩賜財団を設立しました。今では、全国に広がる日本最大の社会福祉法人として済生の道を進んでいます。」

事務長 橘川 健二氏

次長の髙橋氏は「病院の名前にもなっている済生の考え方は、病院の理念として全職員の心に刻まれています。医療はもちろん、福祉にも取り組み、まさに生から死までを支援するためには、済生の考えは大切だと思っています。」と語る。

職員が働きやすく、今を知ることができる環境作り

医療現場の状況変化に対応し、地域の医療を守り続ける済生会中央病院。1,300名にのぼる医療従事者は、患者の健康を第一に献身的な医療活動を行っているが、他の病院同様に課題を抱えていた。その一つが、先に取り上げた「医師の働き方改革」への対応や、医療従事者の流動性の加速だ。

医師自身の健康は以前から社会的な関心を集めていたが、実際の医療現場においては医師の勤務状況をリアルタイムに把握することは難しいとされてきた。勤務表での管理は行っているが、患者の容態の変化や突発的なローテーションの変更などが日常的に発生し、実態が十分に可視化されていなかった。済生会中央病院では、医療従事者の勤怠管理は25年以上前に導入した勤怠管理システムを部分的に改修しながら利用していた。しかし、システムのベースは変わっておらず、マニュアルでの業務も残っており、現在の労働環境の変化や法改正にも適応しきれていなかった。そこで、働き方改革と業務の効率アップに向けて、勤怠管理システムを統合人事システムへ切り替えることを決断した。

次長 髙橋 浩史氏

髙橋氏は、統合人事システムの選定には、次の内容を重視したという。「まず、同規模の病院での導入実績があり、パフォーマンスに問題がないことと制度や運用の変更に伴い柔軟に設定できることです。また、勤怠管理以外にも各種の人事手続きの申請など職員の人事機能が包括されていることも重要です。これにはワークフローも実現できる機能も必要でした。さらに、医師の勤怠管理のため打刻機との連携がスムーズに行え、勤務状況をリアルタイムに把握し管理につなげられることも重視しました。」

こうした条件を加味し、結果的に統合人事システムはWorks Human Intelligence社(以下、WHI)の「COMPANY®」に決定した。

統合人事システム「COMPANY®」の導入と打刻機との連携

COMPANY®は、クラウドアプリケーションとして提供される統合人事システムで、多くの企業や医療機関での導入実績を持つ。プロジェクトの進行は人事課が中心となり、COMPANY®の各モジュールをもとにして、病院の制度・運用に合わせて設定し、検証を繰り返すことで導入されたという。石田氏は導入を振り返り、こう語る。

「人事業務は想像以上に多岐にわたるため、通常業務と並行してシステム導入をリードすることに不安がありました。しかし、ゼロからカスタム開発するのではなく、COMPANY®の基本モジュールを利用し、病院の要件に合わせて設定することで、スムーズに導入できました。今後の運用も、COMPANY®の利用スキルを上げることで対応できると考えています。」

人事課 課長 石田 典恭氏

しかし、導入に対しての課題もあった。新たに導入した打刻機とCOMPANY®のデータ連携だ。勤怠管理の精度を高めるため、打刻機からのデータを直接COMPANY®と連携させる仕組みが必要だったが、既存のCOMPANY®のコンポーネントには、この機能が含まれていなかった。そのため、打刻機のデータを収集し、適切なフォーマットに変換してクラウド上のCOMPANY®と連携させるインターフェースアプリケーションの開発が不可欠となった。それほど複雑なアプリケーションではないものの、COMPANY®に精通し、小規模アプリケーションの開発を請け負う企業を探すことは難しかった。そこでWHI社から紹介を受けたのがラックだった。ラックはCOMPANY®の導入支援やシステム開発の豊富な実績を持ち、医療機関のような高い可用性が求められる現場に対しても、柔軟かつ迅速に対応できる点が評価されたのだ。

ラックは、新たに導入する打刻機の仕様を確認し、済生会中央病院の要望とCOMPANY®の利用状況を踏まえながら、アプリケーションの開発を行った。また、クラウド環境とのネットワーク接続に際して、セキュリティ強化を前提とした推奨設定を提案するなど、インフラ周りも支援した。「ラックはセキュリティに強い企業と聞いていたが、実際にサポートを受けて専門性の高さを実感しました。本来の依頼に加えてネットワークとセキュリティ部分にもアドバイスをいただき、大変助かった。」と石田氏は振り返った。

統合人事システムの導入効果

統合人事システムへの移行プロジェクトの開始から1年半、2024年10月から導入を開始し、4か月が経過した。現在は、医療従事者の勤怠状況が迅速に確認できるようになり、職場環境のさらなる改善に向けた取り組みが進められている。

導入の手応えについて、橘川氏は次のように語る。「まだ運用を開始して間もないですが、勤務状況がリアルタイムに可視化されることで、病院を運営する私たちも医療現場の切迫した状況をより具体的に把握できるようになりました。これは医師の働き方に対する意識の変化にもつながっているように思います。」

また、髙橋氏は業務の効率化について言及する。「これまで紙で行っていた申請・承認のフローが、システム内で完結するようになり、事務作業が大幅に削減されました。時間や場所を問わずに手続きができることや、医療行為以外のわずらわしさを軽減することで、職員の利便性や業務効率も向上したと思います。」

さらに、石田氏は「実際に人事システムを職員に利用してもらうと、もっとこうしてほしいという意見が出てくるようになりました。そうした声を聞くことで医療従事者の働きやすい職場を目指せると感じています。」と語る。

統合人事システムの今後

COMPANY®の利用は始まったばかりだが、豊富な機能を使いこなし、職員のフィードバックを反映させながら、より使いやすいシステムへと進化させることが目下の目標だ。そして、リアルタイムでの勤怠管理により、地域住民の医療を支える職員の健康確保を維持し、その負担を軽減する仕組みを整備・維持することが今後の大きな使命となる。済生会中央病院は、自律的なシステム運営を進めながら本システムを院内に浸透させたいとした。

東京都済生会中央病院様

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統合人事システム「COMPANY®」(カンパニー)向けデータ移行・連携システム開発

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